弱点だけでなく錯覚も克服せよ。阪神和田豊新監督(49)が30日、甲子園クラブハウスを訪れ、ナインに珍指令を出した。和田阪神が船出する11月3日からの秋季キャンプ。現役時代に1739本の安打を積み上げた職人は、最大の敵に“思い込み”を挙げた。

 「今年1年やって、自分の考えとギャップがあるといけない。内角が強いと思っていて実は打ってなかったり。外角に強いと思っていて、打ててないとかね」

 秋は個々の強化に重点が置かれる。だが、冷静に自己分析してからでないと、間違った努力は水の泡になるというのだ。得意なはずの内角を打てていないのは、うまく攻められただけなのか。得意と思い込んでいるだけで、本当は苦手なのではないか。つまりは錯覚。今季を振り返った時、そうした選手が多くいたという。

 「数字(データ)やVTRを見せてやらせた方が上達は早い。やらせないといけない立場の選手もいる。大事なのは心構え。気を引き締めて覚悟を持って安芸に入ってきてもらいたい」

 すでに時間無制限の鬼キャンプを宣言しているが、この秋は肉体だけでなく頭も相当使う。「全員集まって食事することはない」とし、夜間練習も徹底。成果は1クールに1回程度行う実戦形式練習(シート打撃など)で確認する考えだ。

 コーチ陣にも珍指令を出した。投は藪、打は片岡がメーンで、新たに入閣する関川、高橋光らスタッフは一新されて若返る。出してほしいのは、自分の色だ。

 「こちらからも各コーチに指示は出す。でもみんなが持ち味を発揮して、これでいきます、というぐらいものを持ってきてほしい」

 遠慮はいらない。思う存分やってくれ。猛虎一筋27年の和田イズム全開、実りの秋にする。【松井清員】