みんなに笑顔を…。阪神榎田大樹投手(25)が7日、東京都内の古巣・東京ガスグラウンドで自主トレを公開し、2年目の目標に「楽しんでもらえる投球」を掲げた。実は昨年8月に祖母が倒れていたことを明かした左腕。エンターテイナーに変身し、全国の虎党、そしておばあちゃんを勇気づけてみせる。

 寒風吹き荒れる東京。キリリと引き締まった表情はいつも通りだが、榎田はあえて「らしくない」目標を立てた。常に謙虚で地道…。これまでのイメージに似合わない表現を何度も何度も口にした。コツコツ努力型の男が12年、投げるエンターテイナーを目指す。

 榎田

 見に来てくれた方に楽しんでもらえるような投球をしたい。ファンの方々に楽しんでもらいたい。

 マイクをもって歌ったり、しゃべったりするわけではないが、自分の投球でファンを笑顔にしたい-。実は胸に期す理由がある。

 11月の高知秋季キャンプを終えた後、家族からつらい事実を知らされた。故郷・鹿児島に住む父方の祖母が8月、倒れていたのだ。「シーズン中だったので、家族が僕に気を使ってくれたんだと思います」。現在も入院し、懸命にリハビリを続けているという。一番のファンとも言える祖母のために一体、自分は何が出来るのか?

 導き出した答えは「投球で笑顔を」だった。

 榎田

 社会人時代も誕生日に突然、電話をくれたり、ずっと気にかけてくれて。いつも自分の試合を楽しみにしてくれているんです。2軍にいたらテレビで見てもらえない。テレビに出て、投球で勇気づけられるようにしたい。おばあちゃんの周りの人も、自分がテレビに出ると、いろいろ言ってくれるみたいなので。

 年末年始は鹿児島に帰省。祖母を見舞い、気持ちを新たにした。大学2年時から始まった、榎田家の恒例行事は正月に家族全員が目標を色紙に書くこと。昨年は「歩(あゆむ)」。今年は「楽(らく)」と記した。楽しんで投球して、虎党、そして祖母に楽しんでもらう。テンポよく、楽しい投球という意味も込めた。

 榎田

 去年は球数が多かった。今年はいかに「楽」をして自分の投球を出来るか。三振より、しっかり1球で打ち取れるように。四球を出して1イニングに20球とかではなく12、13球の中で抑えられたら、もっと多く試合に投げられる。リズム良く行けるので。

 2年目のテーマは「エンジョイピッチング」。快投を連発し、ニコニコ顔を増やしていく。【佐井陽介】