広島篠田純平投手(26)が静かに燃えている。13日に野球殿堂入りした故津田恒実氏(享年32)の背番号「14」を受け継いだ左腕は「少しでも津田さんに近づけられるように」と誓った。肉体強化に励む一方で、開設したブログを通じてのファンサービスにも余念がない。勝負の5年目。「炎のストッパー」魂で2桁勝利を目指す。

 偉大な先輩は他界して19年が経っても色あせない。むしろ鮮明になるばかり。広島・廿日市市内の大野練習場で合同自主トレに励んだ篠田は、故津田氏の殿堂入りに言葉をかみしめるように話した。

 篠田

 心の底から、正直うれしかった。

 81年にドラフト1位で入団し、臆することなく立ち向かう「炎のストッパー」として通算286試合49勝41敗90セーブ、防御率3・31。91年に体調悪化で引退し、93年に脳腫瘍のため他界した故津田氏が、13日に殿堂入りした。投げる腕も、性格も違う。だが「14」で結ばれた絆は強い。

 篠田

 記録はいろんな形で残るが、記憶に残ることは難しい。寂しいことに津田さんの生の映像は見たことがない。今思えば、生の映像を焼き付けたかった。

 07年大社ドラフト1位入団後から、篠田は故津田氏の墓参りを続けている。山口・周南市内の墓前で「14を着けさせていただいています」と報告する。昨季は故障の影響で5勝7敗、防御率4・13に終わったが、復刻版ユニホームで先発した8月26日には巨人戦初勝利を本拠地で飾りファンに“津田魂”を見せつけた。

 14を背負って5年目、真のプロを意識するようになった。昨夏から通う広島市内のジム「アスリート」で、阪神金本、新井貴らを発奮材料に「もともとひょろひょろ。ガンガンやりたい」と肉体強化に励んでいる。昨年12月には「素の篠田純平を知ってもらいたい」とブログを開設し、ファンとの交流を楽しんでいる。

 シーズンフル稼働が、初の2桁勝利への最短距離だ。貴重な左腕。開幕ローテ入り候補だが、「左だから入れるではなく、14番ということを含めて責任を果たしたい」。“津田魂”を胸に、勝負の5年目を突き進む。【佐藤貴洋】