新人選手の契約金問題を朝日新聞に報じられた巨人の渡辺恒雄球団会長(85=読売新聞グループ本社会長)が19日、ついに沈黙を破った。都内のホテルで会食後に報道陣に対応。謝罪の要求にも応じなかったライバル社を「朝日の品格が下がった」と痛烈に批判し、法廷闘争も辞さない強気な構えを見せた。また、内部文書を流出させた人物については「泥棒だな。1人しかいない」と、前球団代表の清武英利氏(61)と決め付けた。

 我慢の限界だったのだろうか。3時間の会食を終えた渡辺会長が、待ち受けた報道陣に対し、まずは朝日新聞への怒りをぶちまけた。15日付の朝刊1面で契約金超過問題を報じたライバル社に抗議文書を送ったが、求めていた謝罪はなかった。これについて「北朝鮮がミサイル飛ばしたっていうなら1面、社会面トップでもいいけど、ああいうさまつな事件で、ああいうことをやったっていうのは、朝日新聞の品格が非常に下がるということだ。読売新聞に対してあれだけの名誉毀損(きそん)をやるということは、大新聞のやることじゃない」と言い放った。

 球団の内部文書が何者かの手によって流出したことは明らか。この点について同会長は「僕も調べたよ。1人しかいない」と断定した。コーチ人事を巡る対立から球団代表を解任した清武氏を指すのかと問われると「他にあるのかい?

 誰かいるのかい?」と言い「内部文書は秘密文書で窃盗された文書。つまり泥棒だな」と、痛烈に批判した。

 また朝日新聞や清武氏との、法廷闘争も辞さない構えも見せた。民事だけでなく、刑事告訴も示唆。「もちろん抗議するけど、こっちはもうちょっと迫力あることをやるよね。内部文書の流出は窃盗事件になる。これは刑事事件だよ。だから偽計業務妨害、特別背任。元役員としてはそういうことになる」と、まくしたてた。

 “口撃”はなおも続いた。清武氏が球界の内部事情を暴露した本を出版したことを振られると「そんなバカげた、ケチな本を読んでいる暇がオレにあるか。原発、TPP。読まなきゃならない本が山ほどある。あんな下劣な人間の、あんなくだらない本を読んでいる暇はオレにはない」。アルコールが入っていた影響か、ろれつは少し怪しかったものの、言葉は止まらなかった。

 今回の問題は、新人選手を獲得する際の契約金が、球界の最高標準額を超えていたという報道が始まりだった。だが、契約金の話はどこかに消え、内輪もめの第2ラウンドという様相を呈してきた。

 ◆偽計業務妨害

 虚偽の風説の流布や、人を欺く計略を用いて、他人の業務を妨害する行為。刑法第233条で、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される。