<阪神5-5DeNA>◇30日◇京セラドーム大阪

 負けなかった-。阪神がDeNAに延長10回、引き分け。和田豊監督(49)の初陣は84年以来の開幕戦ドローとなった。関本が代打逆転3ランにヨシッ!

 守護神藤川がまさかの同点劇にアチャ…。10回に勝ち越されたが、柴田の犠飛でドローに持ち込むジェットコースターのような3時間51分の総力戦だった。この粘りを今日の勝利につなげろ!

 勝利への執念が和田監督を突き動かした。1点を追う10回裏。平野が三塁打で出塁すると、指揮官がベンチを出た。代走に大和を指名。続く柴田の飛球はセンター定位置より浅かったが、本塁を陥れた。二転三転の開幕戦は、3時間51分の壮絶なドローで幕を閉じた。

 和田監督

 最後まで粘り強く、絶対にあきらめないという気持ちが各バッターに出ていた。

 チームきっての走塁巧者の起用が功を奏した。この時点で、ベンチに残った野手は黒瀬だけ。特に7回は相手のミスに乗じて、俊介、城島、関本の代打攻勢。バント失敗はあったが、代打逆転本塁打が飛び出す劇的な展開を呼び込んだ。

 和田監督

 こういう展開になったら、全員でいかないと。しかし、いろんなことが起こるな…。

 この展開を予期していたのか。開幕戦の試合開始直前、恒例の「出陣式」。指揮官が先発メンバーとローテーションを読み上げた後、ベンチスタートの野手、ブルペンの救援陣の名前を1人ずつ呼んだ。「藤原、左は絶対に抑えろ!」。そんなメッセージをそれぞれに添えた。チーム全員で戦う-。就任以来唱えてきた「一体感」の総仕上げとなった。ベンチが空っぽになるほどの激闘で、その思いが同点劇につながった。

 和田監督にとって、開幕戦は特別な日という。その言葉に反することなく、持てる力を存分に発揮した1日だった。前夜は自宅の食卓に、タイの尾頭付きに赤飯、カツが並んだ。この日は午前6時に起床。午前中には節目で訪れる西宮市の広田神社に足を運んだ。宮司との会話で、心を落ち着かせた。昨年まで続けてきた「行事」を変えることはなかった。

 戦いの舞台となる京セラドーム大阪に向かう直前、2軍施設がある鳴尾浜球場に電撃視察。マートンに声をかけた。気配りの人は時間を惜しむように動いた。

 9回表に藤川が登板する時、自らもマウンドに上がった。ともに戦うという気持ちをこめて、白球を渡した。同点に追いつかれるという結果にも「球児は気合が入りすぎたかな。でも、次から(マウンドに)行かないというわけにはいかない。球児は次は大丈夫だ」と守護神をかばった。5年連続の開幕星は逃したが、精神的な強さを感じさせるゲームだった。

 和田監督

 引き分けを良しとして、明日からいきたい。振り返ると、1つ2つ、ああすればよかったと思うことがある。それは結果論だが、その場面で最善を尽くした。

 その表情は疲れを感じさせなかった。指揮官の執念はきょう31日の白星につながる。【田口真一郎】