<広島2-10阪神>◇10日◇マツダスタジアム

 何すんねん!

 猛虎打線が怒りの波状攻撃だ。正捕手藤井彰が2回、顔面付近に死球を受け、そのまま退場した。緊急事態に、5番クレイグ・ブラゼル内野手(31)が奮起。1回の先制中前2点打に続き、3回無死一塁で右前打を放ち、5連打のきっかけとなった。チームは今季最多15安打10点で圧勝。巨人と引き分けた中日と並び、首位タイに浮上した。

 和田阪神が湿ったバットに別れを告げた。初回だ。ブラゼルが復活の雄たけびを上げる。大竹の直球をセンター前にはじき返した。先制の2点タイムリー。この速攻を待っていた。

 ブラゼル

 ああいう場面で打点を挙げて、チームを勢いづけることができた。自分としては、ヒットが出ていないことは意識せず、前を向いていきたかった。本当にいい試合ができた。

 3戦連続ノーヒット中の5番が打てば、活気が出るのは当然だ。仕掛けの遅かった打線が、一気に首位広島を攻め上げた。

 指揮官の「待ち」の姿勢が打線爆発につながった。開幕3カードを終えて、チーム打率2割2厘の低空飛行。オーダーのテコ入れに動くことも考えられた。しかし和田監督が選んだのは、信頼の道。「軸になる所が上がってくるのを待つ」。この日は二塁ベース付近で打撃練習を見つめた後、ブラゼルにアドバイスを送った。

 和田監督

 セカンドの後ろから見ていて、気づいたことがあった。それで打てたかは別だが、あの先制点は大きかった。

 打撃コーチ時代から、何度も助言してきた。得点圏で力みが目立つブラゼルも、初回はコンパクトに振り抜いた。固い絆が実を結んだ。

 打線復活の途中には、アクシデントもあった。2回表に藤井彰が頭部死球により、救急車で運ばれる非常事態。ムードメーカーの負傷で動揺が起きてもおかしくなかったが、チームの結束力はより強固になった。3回にはブラゼルの右前打から一気の5連打が飛び出す。先制、中押し、ダメ押しの理想的な展開で、15安打10得点。もちろん、今季最多の数字だ。待望のクリーンアップそろい踏みに指揮官も手応えをつかんだ。

 和田監督

 それが一番大きい。やっと打ち出した。中心が打ち出すと、こういう展開になる。勝っても接戦が多かった。たまには、打ち勝つことがあってもいい。

 「火」と「日」を必勝デーに掲げる和田理論。2つの曜日で勝ったのは、開幕から初めてだ。しかも投手力充実の広島を打線が攻略したのは大きい。週初めに猛打が爆発し、中日と並ぶ同率首位。和田阪神が強力な推進力を手にした。

 ▼和田阪神が9試合目で、昨年4月19日以来の首位タイに浮上した。今日11日の広島戦で10年9月9日以来の単独首位を目指す。

 ▼近年の阪神新監督が初めて首位に立ったのは、99年野村克也52試合目、02年星野仙一3試合目、04年岡田彰布4試合目、09年真弓明信なし(開幕戦を除く)。いずれも優勝を逃したが、和田監督は波に乗るか。