<巨人6-0オリックス>◇16日◇東京ドーム

 美しすぎる放物線だった。高橋由伸外野手(37)が自身8本目のグランドスラムを右翼席に放り込んだ。「感触が良かった。間違いなく行くなって分かりました」。自然とバットが手から離れる。両手を広げてパンっと1つたたくと、右手を高く突き上げながら、一塁ベースを回った。珍しく感情をあらわにしたベテランは「最初の一番、いい場面で最高の結果を出せたので、うれしかった」と、笑った。

 02年以来10年ぶりの満塁本塁打だった。10年前の記憶を聞かれ「覚えてないよ」と、照れながらも「いい感触はどんな状況も同じ。出るときは出る。甘いボールを積極的にいくということだけ」。カウント1ボールからの2球目、真ん中のチェンジアップを捉えた感触は当時と同じだった。

 交流戦の開幕戦でチームを勢いづける大きな1発。原監督は「大きいグランドスラムでしたね。いい体調で試合に臨んでくれている。強さを感じています。常にグラウンドに立っていてほしいですね」と目を細めた。今季2度目のお立ち台で高橋由は「チームにとっても自分にとっても大きなホームランだった」と声を大にした。実力、人気、ビジュアルと3拍子そろったベテランの存在感が東京ドームで際立った。【為田聡史】

 ▼高橋由が02年9月28日中日戦以来、10年ぶりの満塁本塁打を放った。高橋由の満塁本塁打はプロ1年目の98年2本、99年3本、01年1本、02年1本と、プロ入り5年間で7本と量産したが、その後は昨年まで9年間なし。満塁本塁打のブランクは、38年→50年門前(大洋)68年→80年木俣(中日)70→82年江島(ロッテ)の12年ぶりが最長で、10年ぶり以上は前記3人に次いで4人目。巨人では46年→55年千葉の9年ぶりを抜く最長ブランクだ。なお、巨人の満塁本塁打3傑は(1)王15本(2)阿部9本(3)原、高橋由8本となり、7本で並んでいた長嶋を抜いて3傑入りした。