<巨人2-0ソフトバンク>◇19日◇東京ドーム

 巨人先発内海哲也投手(30)が「秘技」を繰り出しチームに6連勝をもたらした。中軸に右打者がずらりと並んだソフトバンク打線に対し、おくせず内角直球を多投。力で押し切り8回を被安打2、無失点で3勝目を挙げた。不朽の名作漫画「ドラゴンボール」主人公の孫悟空の必殺技「かめはめ波」からヒントを得た投球フォームで、強打者をなぎ倒していった。冗談じゃなく本気、内海の思考回路に迫る。

 かーめーはーめー波ー!!

 内海が悟空になった。少年時代にテレビの中に存在したヒーロー。あの必殺技が、理想の投球フォームと合致した。「毎週、見てましたよ。かめはめ波は最強の必殺技でしょ。投球イメージと同じ。直結している」と、誇らしげに明かした。右の強打者がずらりと並ぶ相手打線。内角直球を軸球にし、ぶった切った。

 唯一のピンチだった5回だ。過去160メートル弾の逸話を持つ、怪力ペーニャに力勝負を挑み、どん詰まりの二塁打を許した。だが、松田、小久保、多村に対しても内角攻勢は変わらない。最後は多村を三ゴロに仕留め、一丁あがり。「足を上げたときに、しっかり立つことを意識した。完璧ではないけど、イメージ通りのフォームで球を投げられるようになってきた」と、戦闘シーンを振り返った。その威力は本塁後方の球団ブースで観戦した長嶋終身名誉監督とソフトバンク王球団会長に突き刺さらんばかりだった。

 内海流「かめはめ波」の極意はこうだ。

 【か】打者に正対し、精神を統一する。

 【め】右足を引き、振りかぶる。

 【は】グラブをおへその前まで下げ、右足をぐっと引き上げる。

 【め】右足を打者に向かって真っすぐ踏み込み、トップをつくる。

 【波】蓄えた力をボールに込め、一直線に放出する。

 「かめはめ波」投球の習得に向け、個人契約を結ぶ保田貴史トレーナーとオフから修行を続けてきた。ランニングも、キャッチボールも常にへそのやや下にある「丹田」に力をためるイメージを徹底。さらに、ためた力を拡散させるのではなく、できるだけ細いビームに集約させ、直線的に放つ意識を植え付けた。「もともと重心が低いし、自分に向いていると思う」と、自身の体の特徴を最大限に生かす狙いもあった。

 天下一武道会ならぬ東京ドームに詰め掛けた4万4490人の観衆がオレンジ色のタオルを振り回す中、お立ち台で言った。「フォームのバランスがここ最近ではなかったぐらい良かった。自信を持って投げられました」。プロ入り後、4戦未勝利だったソフトバンクからの初勝利を手土産に、次なる修行の旅に出発した。【為田聡史】

 ◆ドラゴンボール

 鳥山明原作の、日本を代表するアクション漫画。主人公の孫悟空が、7つそろえば願いがかなうというドラゴンボールを集める。中盤から格闘家世界一競う「天下一武道会」へストーリーが展開。「かめはめ波」は孫悟空の必殺技。体の中に流れるエネルギーである「気」を両手のひらに凝縮、一気に相手に放出する。単行本は全世界で3億5000万部以上を売り上げた。