<阪神7-3DeNA>◇23日◇甲子園

 あれがアメリカンジョークだったと証明するために、1番起用してくれた和田監督のために、マット・マートン外野手(30)は打ちたかった。好機に三振した前日とは別人のヒットショー。3安打猛打賞で大量得点を導き、先発能見に5勝目をプレゼントした。沖縄地方が梅雨明けした日、最強助っ人に停滞していた不振前線も吹き飛んだ。

 マートンが、長い長いトンネルを抜けた。1回先頭でDeNA先発ブランドンの外角142キロ直球をとらえた打球が、久しぶりに芝生で弾んだ。9日オリックス戦で放った中前打から、15打席ぶり、14日ぶりにHランプをともした。リードオフマンの役目を果たすと、金本の逆転3ランでホームにかえってきた。

 2回も2死一塁から真ん中高め変化球に合わせ、左中間の二塁打とし、チャンスを拡大。平野の2点適時打につなげた。当たり出したら止まらない。6回1死でも牛田からライナーで左前に運んだ。5月26日ソフトバンク戦以来、今季5度目の猛打賞。復調を予感させたが、試合後は通路を駆け上がり、言葉少なにクラブハウスへ消えた。

 マートン

 ゴメンナサイ。

 最後に安打を放った9日オリックス戦のことだった。緩慢な右翼守備と悪送球で本塁生還を許した場面を問われ「I

 don’t

 like

 Nohmi-san.ニルイドウゾ」とコメントした。後に冗談だったと説明したが「能見サンが嫌いだから、二塁走者をかえした」と受け取れる暴言だと騒動に発展した。ストライクゾーンの違和感も重なり、打撃不振に苦しんでいた時期。翌10日ソフトバンク戦から5試合、先発を外れた。

 リーグ戦再開の前日22日から“定位置”の1番に戻った。原点回帰しての再スタートは4打数無安打に終わった。7回には目の前で代打桧山が敬遠された直後に空振り三振の屈辱。能見発言以後、精神的なストレスをため込んでいたが、くしくも先発能見を強力援護した3本の安打は、何よりの緩衝材となったはずだ。

 18試合ぶりの猛打賞で、今季の猛打賞ゲームは4勝1分けと無敗となった。和田監督は「もうちょっと続けてくれないと安心はできませんので。もう少し様子を見ながら状態を上げてもらいたい」と、本来の姿を取り戻すことを期待した。1試合だけで終わることなく、完全復調を証明できるか。【岡本亜貴子】