<楽天6-0ソフトバンク>◇29日◇Kスタ宮城

 楽天のエースが復活した。田中将大投手(23)がソフトバンク打線を5安打に抑え、今季初完封で5勝目を挙げた。腰痛で1カ月あまりの離脱を味わい、これまで、沢村賞に輝いた昨季の投球が鳴りを潜めていた。今季最速154キロを記録するなど真っすぐに本来の力が戻った。星野監督も復活に太鼓判。負ければソフトバンクに3位タイと並ばれていたが、投打に圧倒。再び貯金を1とした。

 もう、これ以上ないピンチで、田中は攻めた。8回1死満塁でソフトバンク代打小久保。スライダーを2つ振らせ、1ボール2ストライク。「三振を狙って」4球目は外角直球。声にならない声を発し、右腕を振り切った。空を切らせ、マウンドで1回転。ほえた。次の明石も直球勝負。151キロで左飛に仕留め、続けざまに雄たけびを上げた。

 9試合目で今季初の完封勝利。6完封の昨季と比べると、いくぶん遅かった。春先からの体の不調が原因だが、「復活」の道は見えていた。フォームを修正し、前回22日は2失点完投勝利。「2週連続で、やりたいことが出来た。良い兆しは見えています」と大きくうなずいた。星野監督も「今日は去年のような球が来ていた。去年のマサヒロだよ。復活したと確信して良いでしょう」と、うれしそうだった。

 5月末に腰痛から復帰後、勝っても「直球が少ない」(佐藤投手コーチ)との指摘があった。フォーシーム、ツーシームの直球系が1試合に占める割合は、昨季平均49%。ほぼ半分が本来のスタイルだが、ここ3試合は45%→42%→43%。前回マスクをかぶった小山桂は「変化球で、と話し合ったわけではない。可能性が高いと感じた球を選んだ」と証言した。直球は復活途上でもあった。

 この日はルーキー岡島と初コンビ。「リードに任せた」が、全121球のうち直球系は計69球。昨季平均を大きく超える57%を数えた。8回2死満塁では今季最速154キロを記録。勝負どころで、女房役に直球を選ばせるだけの力が戻っていた。田中本人は「納得する確率は増えているけど、まだシュート回転もある」と満足しなかった。「完全復活」と言わなかったのが、かえって心強かった。【古川真弥】

 ▼田中が今季初完封でプロ通算70勝目。ドラフト制後、高卒1年目から6年以上続けて完封勝ちを記録したのは、66~80年鈴木啓(近鉄)66~78年堀内(巨人)67~76年江夏(阪神→南海)05~11年ダルビッシュ(日本ハム)に次いで5人目。高卒6年以内に70勝は10年のダルビッシュと涌井(西武)以来で、こちらはドラフト後9人目だ。また、田中は4回、ペーニャを三振に仕留めてプロ野球327人目の通算1000投球回を達成。初投球回は07年3月29日のソフトバンク3回戦で、通算134試合目での到達は江川(巨人)ダルビッシュらに並び史上6位タイのスピード記録となった。