<西武6-2楽天>◇19日◇西武ドーム

 西武が歴史的Vへの扉を開いた。楽天田中に集中打を浴びせ、6回途中6失点でKO。大黒柱の中島を腰痛で欠く中、チーム一丸の5連打で攻略した。最大借金9からリーグ優勝すれば、プロ野球史上初の快挙となる。今季、首位との最大ゲーム差は11で、西鉄時代を含めれば、通算4度目の2ケタゲーム差からの大逆転劇が近づいてきた。

 急上昇したチームの戦いぶりを象徴する5連打だった。同点の6回、西武打線が一気に田中を攻略した。2番秋山の右前打を皮切りに、6番浅村の2点適時打でフィニッシュ。首位浮上のかかった一戦で、一挙5得点の猛打で試合を決めた。渡辺久信監督(47)が「みんな集中して、非常にいい攻撃ができた」と絶賛。対田中通算13勝目で、今季初の首位浮上を彩った。

 不穏な空気をも力に変えた。今季全試合スタメンで首位打者の中島が欠場。チームの危機だったが、全員で埋めた。今季最多タイの14安打はその証しだが、チーム一丸を凝縮した場面が、試合前のミーティングだった。「中島の穴をみんなで埋めよう」と声が上がったが、栗山は「誰が言ったのかは…」と頭をポリポリ。「その前からみんなわかっていた」と意思統一するまでもなく、選手の思いは1つだった。

 大逆襲のカギは、若手の台頭にある。チームを支える中心は栗山、中島、中村だが、チームの上昇とともに絶妙なバランスで若手が融合してきた。後半戦から2番に起用され、機能した秋山はその象徴だが、前半戦不調だった浅村の復調、17日の楽天戦でトリプルプレーを誘導した熊代、永江の堅実なプレーは勢いと戦力的なスパイスを加えた。主将の栗山が「若手の頑張りが大きい」と挙げるほどの存在感を放つ。

 そんな若手の力を発揮させたのは、主力の存在だった。普段から若手は背中を追い掛け、レベルアップ。絶対的な力を持ちながらも、目線を同じところまで落とす気配りは、若手の成長の原動力になってきた。秋山は「萎縮せずにプレーできるのは、先輩方のおかげ」と感謝。打撃では各自が先輩にいい形で回すことが合言葉だが、その相乗効果で、得点力を生んできた。日本ハムが敗れ、今季初の6連勝を飾り首位に浮上。渡辺監督は「順位とかは、まだまだ全然関係ないです」と話したが、大逆転劇の最終章が近づいてきた。【久保賢吾】

 ▼西武が6連勝で今季初めて首位に立った。西武は6月4日時点では借金9の最下位で、同7日時点で首位から11ゲーム差。2ケタゲーム差離されていたチームが首位に立ったのは11年中日以来14度目で、11ゲーム差以上は8度目。西武は西鉄時代を含め2ケタゲーム差逆転首位が最多の5度ある。借金9以上あったチームの首位浮上は69年近鉄(最多9)92年巨人(同12)94年近鉄(同15)07年阪神(同9)とあるが、過去4チームは最終的に優勝を逃した。西武が史上初の借金9からVに挑戦する。