<コナミ日本シリーズ2012:巨人1-0日本ハム>◇第2戦◇28日◇東京ドーム

 巨人長野久義外野手(27)が、先頭打者アーチで連勝に導いた。1回裏、日本ハム武田勝のシュートを右中間スタンドへ運んだ。史上11人目(12本目)となるシリーズ先頭弾。沢村の好投もあり、これが決勝点となった。4回の守りでは、小谷野の一打を中ゴロにする好守備も見せた。シーズンで坂本とともにセ・リーグの最多安打をマークした男は、初体験の日本シリーズでも勝負強さを発揮している。

 打って良し、守って良し。1番長野が最初のひと振りで試合を決した。1回。武田勝の外角132キロをセンター右へ打ち返すと、打球は最深部に飛び込んだ。日本シリーズでの先頭打者アーチによる1-0勝利は史上初。立役者は「しっかり振れていたので完璧でした」と自画自賛した。だがお立ち台から降りると「まぐれです」と言い直した。

 自分1人の力だけでは打てない。その自覚が「まぐれ」と言わしめる。初の首位打者を獲得した昨年の12月、岐阜・養老郡に向かった。「バットが作られているのを実際に見たい」と、用具契約するミズノ社のバット工場に申し出た。バットが仕上がる様子を、静かにジッと見つめた。

 「ありがとうございました」。バット作製と首位打者獲得のお礼を直接言いたかった。担当者は「バットの木目が詰まっている方がいいとおっしゃるなど、長野さんはこだわりがある選手」と話す。入団3年間、基本モデルは変えていない。この黒い相棒に打たせてもらっている。「ファンの皆さんの声援でスタンドに届いた」。かみしめた多くの人の思いを、バットに乗せてスタンドに届けた。

 姿勢は守備でも同じ。4回1死一塁、日本ハム小谷野の打球をショートバウンドで捕球すると、素早く二塁へ送球し一塁走者稲葉を刺した。「何とか体で止めようと必死だった」結果で生まれた外野ゴロは、日本シリーズでは47年ぶりの珍プレー。気持ちの入った守備で危機の芽を摘んだ。

 それでも喜び爆発といかないのが長野だ。「何とか三塁に進めないと。流れが悪い方に行っちゃうところだった」と6回無死二塁の三振を反省。外野ゴロも「ノーバウンドで捕りに行ったけど…」と悔しがった。日本一まであと2勝となったが「明日から札幌に行ってもうひと頑張りしてきます」と気負いはない。「シーズンと変わりなくできていますね」。初の日本シリーズでも、のびのびと。長野がらしさ全開で頂点までリードする。【浜本卓也】

 ▼長野が99年第2戦秋山(ダイエー)以来11人、12度目の初回先頭打者本塁打を放った。巨人の得点はこの1点だけ。シリーズで1-0勝利は07年第5戦中日以来、5年ぶり14度目。初回の1点だけの「スミ1勝利」は94年第2戦巨人(原の適時打)に次いで2度目だが、先頭打者本塁打1本で勝ったのはシリーズ史上初めてだ。これまで先頭打者本塁打が出たチームは2勝9敗で、先頭打者本塁打がV打になったのもシリーズでは初めてになる。また、長野は4回、小谷野の一打を中ゴロに。シリーズで「外野ゴロ」を完成させた外野手は、65年第1戦にフライを落球後に走者を二塁で封殺した右翼手の柴田(巨人)以来。中ゴロは56年第4戦玉造(西鉄)以来だった。