<楽天8-2オリックス>◇2日◇Kスタ宮城

 「13年版マー君」で、楽天が3連勝を飾った。本拠地開幕戦となったオリックス戦(Kスタ宮城)に、エース田中将大投手(24)が今季初先発。3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で手応えをつかんだカーブを織り交ぜ、7回5安打1失点で今季初勝利。女房役嶋が3安打4打点など打線も12安打8得点で大量援護。開幕から3勝1敗で首位タイをキープした。

 余裕の交代だった。7回を投げ終え、田中の球数は89球。まだまだ投げられる数だったが、その時点で7-1と大量リード。「WBCでも長いイニングを投げていなかったから」という星野監督の配慮でマウンドを降りた。寒さの残る仙台のナイター。勝利を見届けベンチを飛び出した田中の息は白かった。「こういう形で終われてホッとしています」と、心から笑った。

 WBCに出場しなければ、当然3月29日の開幕戦(ソフトバンク戦)に先発したはず。だが、代表戦は極度の緊張と重圧がかかる。星野監督は「開幕投手・田中」の可能性を残しつつ、オープン戦終盤まで結論を出さなかった。最終的には、疲労を考慮された田中は1カード後の本拠地開幕にまわった。

 形だけ見ると、開幕を回避させられた格好。ただ、実際は、田中本人の意思だった。準決勝で敗れ帰国した後、首脳陣の打診に自ら外してくれるよう答えたという。開幕投手は最高の栄誉。投げたい気持ちはなかったのか。即答した。「全くないです。無理でしたから」。理由はシンプルだ。

 田中

 マウンドに立つだけならできますよ。でも、勝たないと意味がない。

 己の体調を冷静に把握していた。WBCによる調整の難しさはあった。この日は150キロ超はなし。「状態を上げていかないといけない」段階の中、球速より丁寧に投げることを意識した。三振は4つと少なかったが、打たせて取った。

 根底には、口癖とも言える信念がある。「自分の出来ることをやる」。前日1日にも口にしたセリフを、代わりに開幕戦マウンドに上がる新人則本に送った。「出来ること」とは、常に進化を求めることに他ならない。この日はカーブを11球。全89球の12%を占めた。昨季は1試合に数球だから、割合をかなり増やし、投球の幅を広げた。きっかけはWBC。救援登板した3月6日のキューバ戦で失点後、マウンドに集まった東尾コーチ、捕手の阿部に「緩急を使おう」と言われた。「球場で流れる摂津さん、涌井さん、マエケンの映像を見たんです。ああいう感じで球を抜けばいいんだって」。苦手だったというカーブ。世界一は逃したが、貴重な財産を得た。

 星野監督には「慎重になりすぎ。直球は、もっと腕を振らないと」と注文をつけられたが、分かっている。「点を取ってもらった後、(3回に)四球から失点は最悪。まだまだですね」と反省した。そして「日本一。そこしかない。そのために、出来ることをやっていきたい」と信念を言い添えた。【古川真弥】

 ▼田中が今季初登板を白星で飾った。田中がシーズン初登板で勝利投手は09年ソフトバンク戦、11年オリックス戦に次いで3度目になる。これでオリックス戦は10年8月1日から6連勝となり、通算では13勝3敗。Kスタ宮城のオリックス戦は8勝0敗と、まだ黒星がない。田中が初登板で白星を挙げた09年は15勝6敗、11年は19勝5敗と、ともに15勝以上を記録したが、今年は何勝できるか。