<阪神3-0巨人>◇11日◇甲子園

 ダイブ、そして大丈夫打!

 早出特打、居残り特打と打撃不振に向き合う阪神5番福留孝介外野手(35)が、攻守に全力プレーで痛快G倒を導いた。聖地が揺れたのは5回、右中間に伸びるロペスの打球に飛び込んでキャッチした大ファインプレー。走者を置いての凡退を重ねていたが、8回2死一、二塁、三度目の正直で右前にクリーンヒット。同郷榎田と、甲子園のお立ち台に初登壇した。

 決死のダイブに甲子園が沸騰した。先発榎田が無失点投球を続けていた5回だ。先頭ロペスの打球が右中間を襲った。抜ける、長打-。誰もが目を覆ったその時、1人の男が飛び込んできた。右翼福留が全身を目いっぱいに伸ばし、横っ跳び。体を地面に強く打ち付けながらも、つかんだ流れとボールを離さなかった。

 福留

 鹿児島の後輩が一生懸命頑張っていたので、捕れてよかったです。

 捕球後はしばらく、その場から動けずヒヤリとさせた。「胸を思いっきり打ったけど、みんな目いっぱいやっている中なんでね。首、背中は(痛みが)若干ありますけど、勝ったから良かったんじゃないですか」。チームメートに手を引かれ立ち上がると、万雷の拍手で迎えられた。

 試合前練習で福留に視線を送る人がいた。08年に引退したミズノ社のグラブ職人坪田信義さん(80)だ。大リーグに移籍する直前の中日時代、坪田さんが福留から依頼を受けて作ったのが「イチローモデル」をベースとしたグラブ。「軽い、柔らかい、よく開く」という注文のもと改良し、福留仕様として仕上げた。4度のゴールデングラブ賞受賞歴がある福留は守備へのこだわりを持ち続け、常に変化を求めた。

 3打席目までは無安打だった。1回1死一、三塁で遊ゴロ併殺。3回2死一塁も二ゴロだ。「それまで何もできてなかったので、なんとかしたいというその思いだけです」と8回2死一、二塁で右前に快打。今季初のカード勝ち越しにだめ押しした。ここまで打率は1割台。試合前練習でも、フリー打撃後にマシン打撃を追加し、和田監督から熱い指導を受けていた。「自分を変えるきっかけにしたい」。不屈の魂で必ず立ち上がる。

 試合前「今日がどれほど寒いかよく分かるな。ほら」と福留が指す先には、珍しく長袖を着たコンラッドがいた。「あれが寒さのバロメーターです」。それほどの寒さに覆われた聖地も、35歳の全身全霊プレーで一気に春らんまんだ。【山本大地】