<阪神4-0DeNA>◇14日◇甲子園

 二刀流だぞ!?

 阪神藤浪晋太郎投手(19)をアシストしたのは打者藤浪だった。勝ち投手の権利を手にして迎えた5回裏の打席。1死一、三塁で2球目を一塁前に絶妙に転がした。三塁から新井が突っ込み、スクイズ成功で2点目。藤浪のプロ初打点からこの回3点が入り、勝利は確実になった。実は甲子園で2本塁打、4打点と強打者?

 でもある藤浪。

 勝利は投球だけでなく、バットでもたぐり寄せた。1点リードの5回1死一、三塁で藤浪はプロ4打席目に入った。初球、バントの構えからバットを引いた。ワンストライク。どよめくスタンド。相手守備陣にも緊張が走った。そして、2球目。内角のボールを流れるような動作でバットに当てると、一塁線へ転がした。打球を見た三塁走者新井が判断よく本塁へ滑り込んだ。

 「ウオオオオッ~!」

 大きな藤浪の小さな技術に、マンモスがどっと沸いた。プロ初打点。勝負の流れを決定づける2点目を自分でもぎ取った。一塁ベンチも総立ちで藤浪を迎えると、ハイタッチで祝福した。

 「たまたまいいところに転がってくれたんで、よかったと思います」

 藤浪は照れたように笑った。実はバントにまつわる苦労は筋金入りだ。大阪桐蔭入学時は、体が大きく膝が弱かったため、バントが苦手だった。腰を落とし、膝を使って打球の勢いを殺す技術が至難の業。だが1年秋からエース格となった藤浪には“必修科目”だった。

 毎日、全体練習が終わってからコーチに付きっきりで指導してもらって特訓した。そんなプレーを、大舞台での決定的な場面で発揮できるところに、黄金ルーキーのすごみがある。

 「セーフティースクイズかどうかは別にして、バントもうまいんでね。いろいろな作戦に対応できるものを持っている」

 和田監督は作戦上の理由から、サインの詳細は明かさなかった。その上で、藤浪のバント技術を評価した。最大の武器である長い手足、大きな体は、小さな技術に対しては弱点にもなり得る。ただ、それを努力で克服してきた。藤浪のここまでの野球人生を象徴するような1打点だった。【鈴木忠平】

 ▼藤浪は5回にスクイズでプロ初打点をマークした。投手登録の日本ハム大谷が今季2打点を記録しているが、登板した試合で打点を挙げた高卒新人投手は10年9月12日阪神秋山以来。高卒新人投手のスクイズは87年9月30日近藤(中日)以来だった。