<阪神5-0ヤクルト>◇21日◇甲子園

 歴史的な勝利だ。阪神藤浪晋太郎(19)がヤクルトを7回2安打無失点に封じて自身2連勝。最速151キロも、打者と状況を見ながら、巧みにペース配分した。わずか83球の投球に「完投もできた」と成長ぶりをアピール。2リーグ分立後、高卒ルーキーが4月中に2勝目を挙げるのは球団史上初。1年目から活躍した江夏をも超えた。

 19歳とは思えない。マウンド上の藤浪には貫禄さえ漂っていた。自己最長7回を83球で投げきった。「無理に三振を狙いにいかずにしっかり力を抜くとか、丁寧にコーナーを突くよりもストライクゾーンで勝負した」。三振は4個でも進化していた。

 直球もいつもより動いていたという。自らの状態を見極めた上での投球だった。最速は151キロ。下位打線には140キロ台前半の直球で勝負した。「完投しろといわれたらできた」と余力を残すほど緩急をつけた。7回1死でミレッジに二塁打されてからは全力投球。続くバレンティンは三ゴロ、畠山は空振り三振と中軸を封じた。

 高校時代から11連勝と無敵を誇る甲子園で、ともに戦った仲間の動向が励みになる。この日、遠く神宮では大阪桐蔭で2枚看板だった立大・沢田圭佑投手(1年)が9回無失点と好投し、チームに延長10回サヨナラ勝利をもたらした。「励みになりますし、今後もお互い刺激し合っていければ」。沢田は4年後のプロ入りを目指し「阪神で藤浪の後ろで投げる」と話している。甲子園春夏連覇を成し遂げたリレーをタテジマで再び再現-。仲間の夢は、藤浪の力になる。

 プロ4戦目。「和田監督さんの初の4連勝の試合で勝つことができてよかったです」と笑みを浮かべた右腕には余裕すら漂い始めた。それは投球内容だけでない。初勝利のウイニングボールは「両親に」と話したが、2勝目については「どうしましょうか。読者プレゼントにしますか?」とジョークもさえ渡る。4万4000人が見守るお立ち台では「必死のパッチ-」を再び披露。「初勝利はいろいろ言うことがありましたけど、2勝目は特に言うこともなかったので、前より難しかったかも」。登板直後のトークで爆笑を誘うちゃめっ気もあった。

 3月31日の初登板で敗れたヤクルトにリベンジも成功。4月までの2勝は、67年の阪神江夏でもなし得なかったセ・リーグの高卒新人55年ぶりの快挙だ。そんな離れ業も、ひょうひょうとやってのける藤浪の前途は洋々だ。【山本大地】

 ▼阪神藤浪が2勝目。4月までに2勝を挙げた高卒新人投手は99年松坂(西武=2勝2敗)以来で、セ・リーグでは58年島田(大洋=2勝0敗)以来55年ぶりになる。藤浪の防御率は0・86と今季初めて0点台突入。松坂は1年目のシーズン中に防御率0点台を記録できなかった。