<DeNA3-12ヤクルト>◇29日◇横浜

 カリブの怪力男が場外アーチを連発した。ヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手(28)が、3本塁打を放った。1-0の1回、3試合連発の2ランを放つと、2回には左翼場外に2打席連発のソロ。8回にはバックスクリーン左への160メートル場外弾と離れ業を演じ、チームを今季最多の6連勝に導いた。4番に座ってからの8試合で打率4割3分3厘、17打点、6本塁打。WBCでも活躍したオランダ代表の猛打は、手がつけられなくなってきた。

 1本目の左翼場外アーチがかすむような弾道だった。8回。バレンティンが真ん中高めの直球をフルスイングすると、打球はバックスクリーン左を抜けて場外へと消えた。160メートル弾。「日本では一番大きな当たりだったね。ここ(横浜)では打席に立つと打てる気がするんだ」。1試合3本は来日3年目で4回目だが、うち3度が横浜スタジアムで一昨年は5月13日で、昨年は5月1日。得意の球場で派手に打った。

 オランダ代表の4番を務めたWBCで左内転筋を肉離れした。開幕に間に合わず戦列に加わったのが13試合目の12日から。それからは3番で3試合、5番で4試合に出場し、計7試合で2割8厘。なかなか調子が上がらない中、首脳陣はあえて、20日の阪神戦から4番に起用した。その意図を佐藤作戦兼打撃コーチは「去年も4月は7番だったけど、4番の畠山と入れ替えたら、明らかにモチベーションが上がった」と明かす。バレンティンの好不調は「やる気」と直結する。賭けとも見えた4番起用には、そんな背景もあった。

 「走者を置いた時の集中力はすごい」という小川監督の思惑通り、4番に入って状態は上向いた。「4番は責任重大だけど、気にいっているんだ。一番信頼されている打順。勝利を左右するスポットだと思う。自分にはラッキーな打順かもしれない」。前日28日までの巨人戦では3戦連続で勝利打点、2試合連続で逆転本塁打を放ち3連勝に導いた。この日は1、2回に連発して28日の最終打席から3打席連続。もう1本出れば日本記録という4回は左飛に終わり、日本語で「スミマセン」と笑った。

 昨オフには、14年から3年総額750万ドル(約6億円)プラス出来高の契約を結んだ。これが心にスキを生み、悪い結果になるのではと心配する声もあった。だが、「その気」になれる条件を得たバレンティンには心配無用のようだ。

 リーグトップのDeNAブランコの14号を猛追し、3年連続本塁打王は夢ではない。ところが「ブランコOK。プレゼント」と笑う。そして言った。「狙っているのはセントラルの優勝なんだ」。故障者続出とチーム状況は苦しいが、主砲が打ちまくれば、巨人への逆襲も夢ではない。【矢後洋一】

 ▼バレンティンが通算4度目の1試合3本塁打をマーク。1試合3本塁打以上の最多記録はブライアント(近鉄)の8度で、4度以上は9人目。3年連続で記録したのは88年2度、89年4度、90年1度のブライアントに次いで2人目となり、セ・リーグでは初。バレンティンは横浜スタジアムのDeNA戦で3度。同一カードで3度はブライアントが88、89、93年日本ハム戦、江藤(広島)が94、98、99年横浜戦(3度とも横浜スタジアム)に次いで3人目。3年連続同一カードは初めてで、3年連続同一球場で記録したのも初めてだ(同一球場で3度は5人目)。

 ◆主な特大アーチ

 05年6月3日にカブレラ(西武)が横浜戦で記録した推定180メートルが最長。西武ドームの天井(左中間)を直撃した同球場初の認定アーチで、カブレラは01年にも推定170メートル弾を2本打っている。90年6月6日にはブライアント(近鉄)が東京ドームの中堅上スピーカー直撃の推定170メートル弾を記録。横浜スタジアムでは90年8月29日マイヤー(大洋)が左翼場外、03年6月8日ウッズ(横浜)が右中間場外へ160メートル弾を放った。横浜スタジアムで1試合2本の場外アーチは、89年8月13日フィルダー(阪神)00年5月17日ゴメス(中日)が記録。