巨人渡辺恒雄会長(86)が今日8日、松井秀喜氏(38)に、東京・永田町の首相公邸でコーチ就任要請する可能性が出てきた。午後6時ごろから予定される、国民栄誉賞の受賞を祝う公邸での夕食会。そこに渡辺会長が同席する。要請するとすれば将来の監督就任を含んだコーチ、もしくは短期の臨時コーチ職とみられる。松井氏は9日に再渡米の予定で、残された時間は少ない。

 渡辺会長が5日に言った「近く会う」の「近く」。それが今日8日だったことが分かった。場所は首相公邸。一般の人々が、簡単に足を踏み入れられる所ではない。セキュリティー上、細かい間取りも公表されていない。しかし、内部には外国の要人を招くための客室や、夕食会のための食堂。さらには茶室まで完備されているという。そこで2人が会うことになる。

 根回しは進めている。5日のセレモニーの後、渡辺会長は「お父さんにはお願いしておいた」と、松井氏の父昌雄氏を通じてコーチ就任を要請したことを明かした。そしてこの日は、長嶋終身名誉監督が松井氏と夕食をともにした。そこでの会話は明らかではないが、長嶋氏が、渡辺会長の依頼を受けて、動いていたとしても、何も不思議ではない。その上で、8日を迎えることになる。

 公邸は巨人の施設ではないため、特別に別室を用意してもらうことには、慎重になるだろう。そういった理由から、込み入った話ができないことを承知の上で、夕食会の席上でコーチへの就任要請などを切り出すようなことになれば、歴史的な証人ができる。長嶋氏と安倍首相ら、地位と名声を持つ人々が、一緒に見届けることになる。

 渡辺会長はこの日の巨人-阪神戦を観戦したが、無言で帰宅。白石オーナーは首相公邸での就任要請について「ないでしょう、それは。総理大臣も官房長官もいる席ですから。諸君らの期待する、込み入った話にはならない。(松井氏の今回滞在中も)ないと思う。私の日程ではね」と現状を説明した。だが、渡辺会長は松井氏のコーチ就任に強い意欲を示しており、異例の場でのオファーを出す可能性は否定できない。

 長嶋氏はCM出演するセコムのホームページに「『ゆっくり休んで』と伝えたが『ゆっくり』は1年間、そして指導者として球界に復帰してほしいと思っています。復帰する場は、もちろん巨人です」と文章をつづるなど、愛弟子の指導者転身を熱望する。

 松井氏は5日に行った引退セレモニーで、将来的な巨人監督就任について「僕の心の中には常にジャイアンツが存在し続けます。何が起こるか分かりませんが、またいつか、ここでみなさまにお会いできることを夢見て、出発したいと思います」と、前向きとも取れる発言をしている。巨人としては今季中の就任を最善としているため、話を進めたい。両者の思うタイミングが一致するか、注目される。

 ◆首相公邸

 東京・永田町にある首相の住まい。首相が執務のために使う首相官邸とは通路でつながっている。29年から02年まで歴代の首相が使った旧官邸の建物を約86億円かけて改修し、05年3月に完成した。鉄筋4階建てで、延べ床面積は約7000平方メートル。歴史的価値の高い旧官邸の玄関ホール、大ホールや階段などは建築当時のように復元。迎賓館としての機能も併せ持ち、2階には和室や茶室がある。安倍首相は公邸への引っ越しが遅れ、「自宅通勤」の期間が7日で133日と、現在の公邸になった05年以降では“最長記録”を更新中。与党の国会議員らを食事に招くなどの際に使用している。