<ヤクルト3-4西武>◇14日◇神宮

 甘えを捨てた西武4年目右腕の岩尾利弘投手(25)が、プロ初勝利を挙げた。1点リードの5回から2番手で登板し、2回2安打無失点に抑えた。プロ5試合目で白星を手にし「こういう日を夢見て頑張ってきました。(4連敗中の)チームの流れを止めて1勝できてうれしい」と感無量の様子。スタンドから岩尾コールが起こるたびに頭を下げ、感謝した。

 ファンにも同僚にも優しい性格が、マウンドでの課題だった。今年はオープン戦期間の開幕1軍争いで早々と脱落。先発した試合で3回6失点と炎上し、渡辺監督から逃げ腰の投球を一喝された。「監督に言われて自分に後はないんだと吹っ切れました」と目の色を変え、2軍からはい上がった。6回1死満塁のピンチでは「やるしかない」と開き直り、田中浩、ミレッジを遊ゴロに仕留めた。弱気の虫は、もういなかった。

 津久見高時代に野手から投手に転向。3年最後の県大会で負けた悔しさが忘れられず、やめるつもりだった野球を続けた。進学した別府大で飛躍し、09年ドラフト3位で入団。プロ入り時66キロだった細身の体は、苦しい増量作戦の末に15キロ増に成功した。1軍で戦う体力と自信をつけ、“いい人”の殻を破った初勝利だった。【柴田猛夫】