<阪神3-2西武>◇5日◇倉敷

 つよぽんが決めた。同点の9回、1死一、三塁で阪神西岡剛内野手(28)が右中間に感激のサヨナラ打だ。目の前で代打桧山が敬遠され、燃えないはずがなかった。効果抜群の助言で大和、柴田をヒーローにお膳立てしてきたつよぽんが、倉敷ではヒーローになった。茶髪にイメチェンして今季2度目の殊勲打。巨人に引き離されるわけにはいかない。

 白球は糸を引くように伸びていく。ナインにもみくちゃにされ、頭から水をかけられた。サヨナラだ。劇勝だ。

 同点の9回1死三塁。ネクストサークルに立ち、目の前で代打桧山が歩かされる。敬遠でオレと勝負か-。勝負師の血がうずいた。不調など関係ない。誇り、意地、執念がある。カウント1-1からの直球を痛打。ライナーで右中間に落としてみせた。

 西岡

 僕も歩かされるかと思ったけど、打撃の状態を見て、僕と勝負するのは当たり前。燃えましたね。あそこで燃えなくて、どこで燃えるんですか。打てないなら、打てないなりにやらないと。応急処置です。

 心は燃えていても、頭は冷静だった。直前の4打席はあっさり凡退。和田監督も「それまでスカみたいな打撃をしていた」と振り返るほどの状態だ。常に自らの状態を把握し、最善のプレーを選ぶ。実は3回の2打席目からノーステップ打法に切り替えていた。引き出しの多さも西岡が長いスランプに陥らない秘訣(ひけつ)だろう。そして大勝負の9回に結果で応えた。

 西岡

 打てないときは何かを変えないといけない。シーズン、ずっと(ノーステップ打法で)やるわけじゃないですから。

 岡山は温かく西岡を出迎えた。倉敷では初めてのプレー。試合前、一塁側ベンチ真上で少年の声が飛ぶと思わず表情を緩めた。「ウワ…、ニシオカだ…。初めて見た」。いつだって夢を与える存在だ。ヒーローインタビューも粋だった。「3割を切った西岡です。(倉敷は)僕自身、あまりゆかりがないのですが非常に素晴らしい街だと思います!」。前日4日の昼下がり。土地勘のない岡山市街を歩き、目指したのは美容院だった。「することがなかったので…。飛び込みで行きましたよ!」。この日は阪神では、初めて髪を茶色くして登場。気分も一新して、4月2日中日戦(京セラドーム大阪)以来、今季2度目のサヨナラ打だ。

 首位巨人も勝ち、0・5ゲーム差は変わらない。いまはただ、優勝するために一丸態勢を築く。交流戦直前の5月9日からの愛媛遠征中に松山市内の焼き肉店で野手会が開催された。率先して呼びかけたのが西岡だという。シーズン前に「僕が入ったことで化学反応を起こしたい」と話した。開幕など節目での決起集会は開催されるが、珍しいタイミングでの実施だ。新戦力を中心に、一致団結するムードが醸成されている。

 西岡

 (負傷していた)足なんか全然、痛くないですよ。勝ちだけを目指さないといけない。時期は6月だけど、1戦1戦しっかり戦わないと、最後、0・5ゲーム差で負けたりする。

 西岡の眼中には優勝しか入っていない。激戦続きで体が万全でなくても、ワンプレーに命を削る。虎の風雲児が全身全霊で白星をつかみに行く。【酒井俊作】