<ヤクルト9-5楽天>◇5日◇神宮

 ライバルの背中が見えた。楽天のルーキー宮川将投手(22)がプロデビューした。ヤクルト戦の7回から5番手で登板。最速143キロの直球で攻め、2イニングを3安打無失点に抑えた。2日に育成選手契約から支配下選手契約となり、即1軍昇格したばかりだったが、堂々たる投球だった。ライバルと公言するのは、大体大の同期でオリックスのドラフト1位・松葉貴大投手(22)。目標とする投げ合い実現へ前進した。

 気持ちをぶつけた。宮川が7回、初めてプロのマウンドに上がった。1球目。138キロの直球は捕手の嶋も捕れないほど高めに浮いた。「緊張して、マウンドでは足がふわふわして力が入りませんでした」と、初めて味わう緊張感の中で懸命に腕を振った。1イニング目に2死一、二塁のピンチを迎えたが、逃げずに直球で押し無失点に抑えた。

 悔しさを胸にはい上がった。大体大時代の1年秋、オリックス松葉にエースの座を奪われた。「奪い返せなかったのは悔いが残ります」。松葉はドラフト1位で宮川は育成選手としてプロ入り。差はついても「松葉と投げ合いたい」と強い気持ちがあった。5月、松葉のプロ初登板も寮のテレビで観戦。だが途中で見るのをやめた。「面白くないじゃないですか」。悔しさを抑えられなかった。

 松葉との投げ合いを見せたい存在もいる。父欣也さんだ。両親が離婚したため、中学時代から男手ひとつで育てられた。プロ入り前にはキャッチボール相手を務めてもらい、二人三脚で歩んできた。1軍昇格が決まると、真っ先に電話で連絡。父の第一声は「えっ、なんて?」と状況を理解していなかったという。それでも「喜んでくれたので良かったです」と、うれしそうに話した。大阪に住む父のために「京セラドームで投げ合うこと」が、プロ入り後の一番の目標だった。

 その気持ちがボールに伝わっていた。コントロールに課題は残すが、直球の最速は143キロをマーク。8回には4番バレンティンから見逃し三振を奪った。2イニングを3安打無失点。捕手の嶋は「魂を感じるボールだった」と話し、星野監督も「自信になるよ。球に力がある」と評価した。

 デビュー戦となったこの日、くしくも松葉が先発していた。縁があると問われ「そうなんですかね」と少し笑った。ライバルを倒すため-。まずはスタートラインに立った。【斎藤庸裕】

 ◆宮川将(みやがわ・しょう)1990年(平2)10月19日生まれ。大阪・泉南市出身。大体大浪商から大体大に進む。同大学では松葉(オリックス)とともに2本柱として活躍。リーグ通算29勝で、MVPに3度輝いた。昨秋育成ドラフト1位で入団。2軍で14試合、3勝0敗、防御率2・89を残し、6月2日に支配下選手登録された。最速147キロ。184センチ、87キロ。右投げ右打ち。