<阪神0-1巨人>◇4日◇甲子園

 巨人宮国椋丞投手(21)が敵地で虎を黙らせた。雨が降り続き、湿度は90%を超える熱帯夜。丸刈りの頭から汗が飛び散った。「なんとしてでも1つ勝ちたい。どうしても勝ちたいんです」。普段はポーカーフェースを貫く21歳が、珍しく感情をむき出しにして臨んだマウンド。要所を締める投球で7回途中を散発6安打の無失点に切り捨てた。

 開幕投手を務めたが不振が続き、約1カ月半の2軍生活で出直しを命じられた。「このままでいいと思ったことは1度もない。自分はまだまだ半人前」と、己の身の丈は理解していた。だから、成長することに飢えていた。同じ寮で生活し、ルーキーながらチーム最多の7勝をマークしている菅野の部屋をノックし「カットボールを教えて下さい」と頭を下げた。「教えたというよりは、使い方とか話しました」(菅野)と、術を学んだ。

 温めてきた新球で虎打線の意表を突いた。2回1死、新井貴に2ストライクから外角に124キロカットボールを投げ込み3球三振。スライダーの軌道よりも小さく、鋭く変化するカットボールを序盤に見せたことで的を絞らせなかった。加えて、最速150キロの直球と98キロのカーブの緩急で、女房役の実松が巧みにリードしてくれた。

 完封ペースだったが、7回2死一塁。「代えに来た」(原監督)と、マウンド上で交代を告げられた。「素晴らしいリリーフ陣の先輩がいるので、初回から思いっきり投げた。感謝しています」と、自らマシソンにボールを手渡した。昨年プロ初勝利を挙げた甲子園のマウンド。ひと回り大きくなって帰ってきた。【為田聡史】

 ▼巨人は6回の1点を4投手のリレーで守って3連勝。甲子園球場で1-0勝利は02年4月19日以来になる。今季の1-0勝利は5月5日広島戦、同12日DeNA戦に次いで3度目だが、3試合とも継投で記録。巨人がシーズン3度の1-0完封リレーは94年以来、19年ぶりだ。巨人のリリーフ投手が失点したのは6月23日中日戦の高木京(7回に4失点)が最後で、その後は延べ21人が登板して23回1/3無失点を続けている。