<中日4-1ヤクルト>◇7日◇ナゴヤドーム

 「不吉な」シーンだった。ヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手(29)は9回の第4打席で、カウント3-2から岩瀬が投じた1バウンドのスライダーを空振り。そのまま左手1本で持ったバットは大きな弧を描き、中日の捕手小田の頭部を直撃した。上体が前に突っ込み、フォロースルーで体重が後ろにかかったもの。池山打撃コーチは「振りが大きくなっているのはもちろんある」と不安を口にした。

 「捕手ゴツン」は5月7日中日戦以来。月間打率2割3分5厘で、今季唯一の2割台と不振だった5月の打撃に戻ってしまったのか。1打席目は外寄りのカーブに空振り三振し、3打席目は外角のスライダーを強引に引っかけた。同コーチは「ボール球を振って、四球を取れるところで手を出している」と不振の現状を分析した。

 プロ野球記録の55本塁打まで残り3本から、5試合連続ノーアーチと足踏みが続いている。バレンティンは「何試合か打てていないけれど、それも試合の一部」と、努めて淡々と話した。今季は振りがコンパクトになり、スイング後のバットが捕手の頭部に当たるシーンはほとんどなかった。球を見る時間が長くなり、ボール球に手を出して打ち損じるリスクが減ったことが、リーグトップの87四球という数字にも表れている。

 残り25試合。「先月18本打って、今月は何本打てるか分からない。でも我慢しないといけない。無理やりは打てない」と言い聞かせるように話した。内角攻めも厳しさを増してきた。偉業達成の目前で、バレンティンがもがいている。【浜本卓也】