<西武6-9ロッテ>◇14日◇西武ドーム

 ロッテ角中勝也外野手(26)の好走塁が、逆転勝利を決めた。2点リードの7回1死満塁。鈴木の中飛で二塁走者だった角中が本塁生還した。95年ダイエー以来の“2ラン犠飛”が飛び出すように、勝負事にはシナリオのないドラマがある。伊東監督(51)は試合前、逆転優勝をあきらめないと宣言。首位楽天とは6・5ゲーム差。可能性ある限り、ロッテは戦い続ける。

 両腕を振りながら、角中は猛然と走った。7回1死満塁。代打G・G・佐藤の適時二塁打で2点差としたばかり。鈴木の飛球は、前進守備する西武の外野の後ろに伸びた。中堅の秋山が背走キャッチすると、角中は二塁ベースを蹴り上げた。清水三塁コーチは迷いなく腕を回し、本塁突入を求めた。角中は指示に忠実に、全力疾走を緩めずホームイン。4点差となる貴重な得点を、伊東監督は「あれが大きかった。よく走ったね。状況判断と準備ができていた」と称賛した。

 冷静だった。鈴木の飛球を見た瞬間、角中は「外野の頭を越えた場合は、楽に本塁にかえれる。ならば、捕球された場合に備えて、タッチアップを狙おう」と判断。まさに最善策だった。

 「普通のプレーですよ。コーチャーが止めるまでは全力で走るのが当たり前です」と、角中は控えめに話すだけだが、打った鈴木は「角さんの素晴らしい走塁。犠牲フライで2打点は初めて」と目を丸くした。何しろ“2ラン犠飛”は18年ぶり。華麗なる珍プレーと言っていい。

 ペナントレースだって、何が起こるか分からない。前夜、本拠地で楽天に2連敗を喫した伊東監督は「数字として可能性のある限り、あきらめない。ファイティングポーズを取り続ける」と、試合前に明言。先発松永を4回で降ろす継投策。4回、サブローにヒットエンドラン。7回、4番に代打G・G・佐藤。8回はまた4番の代打福浦が2点打。執念の采配に、ナインも応えた。「負けられない。一戦必勝や!」。福浦の言葉を、ロッテナインは共有している。【金子航】

 ▼ロッテ鈴木が7回1死満塁から中犠飛。一挙に2人が生還し、2打点を挙げた。最近の2点犠飛は小久保(ダイエー)が95年4月28日日本ハム戦の2回、無死満塁から右犠飛を放ち、中継プレーの遅れもありライマー、カズ山本の2走者を迎え入れた例がある。