1年目から10勝し、広島とのCSファーストステージでは第3戦(14日)先発が濃厚な阪神藤浪晋太郎投手(19)が9日、「短期決戦仕様」で登板に臨む考えを明かした。試合を壊さない安定感あるマウンドさばきが身上の右腕が、ポストシーズンでは初回から全力投球も辞さない。

 14日の午後2時。昼下がりの甲子園マウンドに立つ藤浪の脳裏に、とてつもない窮地が描かれている。いきなり無死満塁で60発男のヤクルト・バレンティン…。実際には走者はなく、対するのは広島のトップバッター丸のはず。それでも絶体絶命の場面で発揮してきた底力を1回から、プレーボール直後の初球から全開するつもりだ。

 「短期ということなので投げ方は変わってくると思います。制球を大事に、というのもありますし、ペース配分のところが変わってくると思います」

 CSに向けて始まった甲子園練習で、きっぱり話した。前日144試合を終えた公式戦では、調子が悪くても試合を壊さない安定感ある投球を心がけた。高卒新人離れした「ペース配分」も大きな武器のひとつだった。相手クリーンアップに対したとき、また接戦でピンチを迎えると途端に、従来以上の集中力で切り抜けてきた。強弱をつけるうまさも発揮し、終盤で150キロ超えを投じるゲームもあった。CSではその「ギアチェンジ」を封印し、常にフルスロットルで突っ走る。

 勝ち星を稼げなかった9月以降の登板で中西投手コーチは「春先に比べて荒々しさが足りない。探りながら投げている」と指摘した。立ち上がりからリミッターを外すことで、好調時の球威が戻る一石二鳥も望める。競馬でいえば、好位追走の万能タイプが、ゲートから大逃げを打つような大変身。突破か敗退か、運命の試合はプレーボールから全開だ。【山本大地】