<パCSファイナルステージ:楽天8-5ロッテ>◇第4戦◇21日◇Kスタ宮城

 楽天が、球団創設9年目で初めて日本シリーズ進出を決めた。ロッテとのCSファイナルステージ第4戦に競り勝ち、リーグ優勝のアドバンテージによる1勝を含め、4勝1敗でCSを突破した。星野仙一監督(66)は、田中将大投手(24)、則本昂大投手(22)の先発2本柱をブルペン待機。8回に則本、9回に田中を送り、盤石リレーで勝利をたぐり寄せた。田中は1勝1セーブでMVPを獲得した。星野監督は、自身4度目の日本シリーズで宿敵・巨人と戦う。エース田中を軸に、悲願の日本一に挑む。

 名前がコールされ、田中は9回のマウンドに向かった。割れるような拍手に「非常にありがたかった」と背中を押された。2死から連打で一、二塁と1発同点のピンチを招いたが、最後はロッテ井口を三ゴロに仕留めた。ジェット風船が飛び交う中、両手でガッツポーズ。本拠地で星野監督を胴上げし、田中は「Kスタで胴上げできてうれしい」と喜んだ。

 その星野監督の大胆不敵なタクトが、勝利をたぐり寄せた。7回裏にマギーのソロで勝ち越すと、直後の8回、中2日で則本。さらに、9回を中3日の田中で締めた。田中は第5戦、則本は第6戦に先発予定だった。万一、逆転負けなら影響が出かねない。だが「やぶれかぶれだ。2人とも若いし(先発してから)2、3日あれば1イニングは行ける」と信頼は固かった。

 アドバンテージを含め4勝1敗。レギュラーシーズンそのままの強さを見せた。星野監督は「本当に幸せな男だ。こんなに息子たちが。ファン、家族、チーム、全ての皆さんのために選手はやってくれました」と、選手全員をねぎらった。特に、先発投手が光った。第1戦から田中、則本、美馬と3試合連続で9回を投げ抜いた。大舞台でいつも以上の結果を出せる要因を問われ、星野監督は「分からん。全てが充実してないとダメだろうな」。心技体の全てがそろっていた。

 しかし、2週間前まで、チーム状態は底だった。先月26日のリーグ優勝後は、3勝6敗1分け。星野監督は「気持ちの問題。それが5割以上を占める」と指摘した。そんなチームを浮上させた。3連敗した今月5日の西武戦後。珍しくミーティングに顔を出すと、全員の顔を見回し言った。

 「俺も優勝して浮かれていたところがあった。みんなも浮かれていたかも知れないが、しっかり引き締めていこう」

 厳しさでならす指揮官自ら“心のスキ”を認めた。ある選手は「びっくり。でも、それで、みんな1つになれた」。心を整えた選手たちは強さを取り戻した。

 引き締めたのは監督だけじゃなかった。優勝後の3勝のうち2勝を挙げた田中は「僕は変わらずに投げていた」。周りに積極的にアドバイスした。調子の上がらない釜田に、フォームの注意点を伝えた。監督とエース。立場は違っても、思いは同じだった。

 この日でCS突破を決めたことで、26日の日本シリーズ初戦は田中が中4日で先発できる。最大7戦のシリーズで、フル回転が可能となった。星野監督は「私の永遠のライバル、ジャイアンツ。しっかり胸を借り、頭を下げ、やっつけます」と力強く宣言した。田中も「去年のチャンピオン。一番強いのは間違いない。僕らはチャレンジャー。相手に向かって、挑んでいけばいい」と気合十分だ。日本一へ。最後の挑戦が始まる。【古川真弥】