<コナミ日本シリーズ2013:巨人1-5楽天>◇第3戦◇29日◇東京ドーム

 楽天の美馬学投手(27)が先発の役割を果たした。6回に打球を受けて途中交代したが、5回2/3を4安打無失点と好投し、試合をつくった。今季交流戦の巨人戦(5月23日)では1回6失点KO。その反省を生かし、両サイドにカットボールとシュートを散らして、強力打線を封じた。身長169センチと現役投手では3番目に低い男が、大きな仕事をやってのけた。

 美馬が、巨人打線をだまらせた。4回、先頭の寺内に安打を浴びて無死一塁。阿部、村田、高橋由のクリーンアップを迎えるが、恐れずに攻めた。「嶋さんのリードに助けられました。テンポよく投げようと思っていた」。阿部、高橋由を内角のカットボールで平凡なフライに仕留め、村田も外角のスライダーで中飛。反撃しようとする相手の流れを断ち切った。

 6回2死から阿部の打球を右足甲に受け、そのまま降板した。病院には行かず、応急処置を受け、試合後は自力で歩行。大事には至らなかった。アクシデントもあったが、日本シリーズ初登板で5回2/3を投げ無失点。星野監督からも「美馬がよくあそこまで投げてくれた」と褒められた。5月23日の巨人との交流戦で1回6失点KOを食らった借りを、きっちり返した。

 交流戦の時とは、スタイルがまるで違った。本来、美馬は140キロ台後半の直球で押し、スライダーを織り交ぜるオーソドックスな右腕だった。現在、直球は140キロ台前後。それでも、右打者の内角へシュート、左打者の内角にはカットボールで打者の芯を外す。この日は、カーブも有効に使った。「適度に(球種を)バランス良く投げられた」と、巨人寺内が言うように、技巧派に変身していた。交流戦との違いが、巨人打者陣の狙いを狂わせた。

 身長は169センチと上背はない。高校、大学時代に周囲からこんな声を耳にした。「170センチ以上あったら、プロ野球選手になれたのにな」。それが悔しかった。「170センチなくても、絶対プロ野球選手になってやろうと思って、ずっとやってきました」。先入観や壁を打ち破ろうとする強い気持ちを常に持っている。だから、強い者にも恐れずに立ち向かう。この日、阿部、村田、高橋由の懐を攻め、7打数1安打に封じた。

 試合後、星野監督は「逃げたらつかまります。攻めて、攻めていけば、良い結果は出る」と言った。その通りに、果敢に攻めた美馬。「インコースにも結構、いけた」と手応えを口にした。小さな右腕が、敵地ででっかい仕事をした。【斎藤庸裕】

 ◆美馬学(みま・まなぶ)1986年(昭61)9月19日、茨城県出身。藤代高2年の03年春にエースとして甲子園に出場し3回戦敗退。中大から東京ガスを経て10年ドラフト2位で楽天入団。公式戦通算3年の成績は64試合16勝16敗、防御率3・45。19日のCSファイナルステージ第3戦ではロッテを被安打4で完封した。169センチ、75キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸3100万円。