マー君のメジャー移籍に暗雲!?

 日本野球機構(NPB)と大リーグ機構(MLB)との間でほぼ合意し日本シリーズ終了後すぐにも発表予定だった、新ポスティングシステム(入札制度)を含めた日米選手協定の締結が延期されたことが5日、分かった。労組日本プロ野球選手会(嶋基宏会長=楽天)が今月に入ってから「新協定にメリットはない」と、NPBに締結しないよう申し入れたため。NPBは選手会との話し合いを継続させる見込みだが、入札制度を利用して今オフにメジャー移籍の可能性がある楽天田中将大投手(25)の動向に影響を及ぼす可能性が出てきた。

 すでにNPBとMLB、さらにMLB選手会との間では、10月末までに新たな入札制度の内容が固まり、日本シリーズの終了を待って発表する段取りになっていた。新入札制度は、最高額を提示した球団が独占交渉権を得る従来の方式に変更はないが、日本の球団に支払われる額を入札額1位と2位の間とすることで、入札金の高騰を避ける措置をとった。また、契約交渉が破談となった場合に球団側に罰金を科すこととし、岩隈や中島のような悲劇が繰り返されないようなルールも盛り込まれた。

 ところが、今月1日に選手会から「新日米選手協定について」と題した文書が届いたことで、事態は変わった。MLB関係者によると、米国時間4日にNPBから「選手会の合意が得られず、現状で新協定を締結できない。もう少し時間がほしい」という内容の連絡が入ったという。

 NPBは選手会との話し合いを継続させる方針を固め、この日までにNPB12球団に、選手会から届いた文書を配布し、状況を説明した。もともと予定されていた11日の労使間事務折衝で、この問題について協議するとみられる。いずれにせよ、新協定の締結は当初の予定より大幅に遅れることになった。

 文書によれば、選手会は、改正してもなお1球団としか交渉できない点を問題視し、複数球団と交渉できる状態にすることが必要だと主張している。新協定には「NPB球団にとって全くメリットがない」として、協定が失効している現在の状態を継続するほうがいい、とまで訴えている。選手会関係者は「本来なら(全12球団の選手会長らが集まる)組合大会で話し合わなければいけないようなこと。日本シリーズが終わったばかりで、選手間で十分な情報共有もできていないので、話し合う時間が必要だということ」と話した。

 選手会が申し入れた通りに協定が失効したままなら、当然ながら入札制度は活用できない。ルールがないのだから、理論上は交渉が自由。例えば楽天球団が、メジャー30球団と田中のトレード移籍を交渉することもできる。しかし、NPB、MLBともに“無法状態”は望んでおらず、強行すればMLBが契約を認めないなど泥沼化する恐れもある。

 選手会との交渉が決裂し、新協定が結べないとすれば、事実上、田中が今オフにメジャー移籍する可能性は極めて低くなる。海外移籍が可能なフリーエージェント(FA)権を得る15年オフまで待たなければならない。

 確かに入札制度は不完全な制度で、今回の新協定も妥協案といえる。とはいえ、日米間で合意寸前だった段階で待ったがかかったことで、球界の混乱は避けられない。今後の行方が注目される。

 ◆新入札制度が締結されなかった場合

 楽天が入札制度を活用せずに今オフに田中をメジャー移籍させる場合、保留権の切れる12月1日以降に自由契約にする方法もあるが、当然のことながら移籍金は入らない。