天下を取ろう!

 阪神がモテモテ右腕を振り向かせる「殺し文句」を用意した。FA補強の候補に絞った中日中田賢一投手(31)と明日17日の午後に入団交渉すると発表した。名古屋市内で準備した会場は、織田信長ゆかりで徳川家康が築城したとされる名城、名古屋城を見晴らすことができる抜群のロケーション。金のしゃちほこをバックに、男の魂を揺さぶる「天下取り」のフレーズを携え交渉に臨む。

 後出し、と言われてもいい。阪神が特上の「お・も・て・な・し」を持って中田賢を口説き落とす。複数球団からラブコールを受けるモテモテ右腕に、ソフトバンクが解禁即アタックをした。阪神は17日に高野球団本部長と中村GM、嶌村GM補佐が初交渉に臨む。ライバルの出方は見守った。できる限りの好待遇で熱い思いを伝えていく。

 (1)天下取り

 ソフトバンクの口説き文句は「帰ってこい」だった。九州男児に響くフレーズだ。阪神幹部は言った。「胸に届くものを考えないと。名古屋から関西へというのは、信長や秀吉の天下取りと同じ動き。名古屋城を見ながら、そんな話をしたい」。狙ったわけではないが、交渉会場からは金のしゃちほこが輝く名城が見晴らせるという。尾張名古屋で育ち、花は関西で咲かせよう!

 85年以来の「球界統一」へ、天下を収めた英傑を例えながら、グラリとさせたい。

 (2)どえりゃ~うまいもん

 交渉は午後に行われる。ソフトバンクは「高級」フレンチ料理を前に会話を弾ませたという。「食事しながらのほうがお互い話もしやすいでしょう。せっかくの機会だし、しっかりしたものを用意したい」。フレンチかイタリアンか、はたまた中華か和食か。お口を楽しませながら、グラリとさせたい。

 (3)3点セット

 もちろん条件も負けていない。ソフトバンクの提示にひけをとらない「3~4年の複数年契約」と「先発手形」、10番台を中心とした「背番号」も希望に添う形で用意する。満員の甲子園で気持ち良く投げるため、できる限りの要望を聞いて、グラリとさせたい。

 FAでの同時獲得を狙っていた日本ハム鶴岡は断念した。照準は、中田賢1人に絞った。スタンリッジが退団し、先発再転向の久保はFA宣言して移籍する可能性がある。V奪回に欠かせない先発強化の恋人を振り向かせられるのか。虎がおもてなし精神で、中田賢の懐に飛び込む。

 ◆阪神の殺し文句

 96年は吉田監督がFAした西武清原を「タテジマをヨコジマに変えてでも君が欲しい」と名セリフで口説いた。同監督は97年もヤクルト吉井とのFA交渉に「優勝には、あんたの力が欲しいんや」。中村GMは昨年、福留との入団交渉で「球界全体のことを考えて何とか力を貸してほしい」。オリックス監督だった05年は巨人を自由契約になった清原に「関西のファンが心待ちにしている」「野球人生の最後をオレに託してくれ」「阪神に追いつき、追い越そうとしている野望に力を貸してくれ」と3フレーズでアタックしたことがある。

 ◆中田賢一(なかた・けんいち)1982年(昭57)5月11日、北九州市生まれ。八幡-北九州市大を経て04年ドラフト2巡目で中日入団。ローテーション投手として活躍してきたが、今シーズン中盤は救援に回り15ホールドを記録。通算186試合61勝51敗、防御率3.57。推定年俸7000万円。180センチ、78キロ。右投げ右打ち。