新しいポスティングシステム(入札制度)が成立しても、マー君のメジャー挑戦にハードルは残る。楽天立花陽三社長(42)は5日、日米間で基本合意した新制度について、あらためて否定的な見解を述べた。入札額の限度額が約20億円と低く抑えられたことで、田中将大投手(25)のメジャー挑戦に関し、取締役会でも難色を示す声が出るとの見通しも口にした。制度が最終合意した後で、田中と話し合う予定。今後は、田中の熱意が球団を動かせるかが焦点になりそうだ。

 立花社長は、新システムに否定的な意見を繰り返した。日本野球機構(NPB)と米大リーグ機構(MLB)の間で、新しいポスティングシステムについて基本合意した。以前と異なり、入札金の上限が約20億円に抑えられている。同社長は、この日、仙台の地元テレビ局をはしご。夜は市内ホテルで日本一祝賀会に出席した。師走のあいさつ回りに費やしたが、訪問先の1つで「このままだと、うちの取締役会にかけても良い反応は出ないでしょう。ステークホルダー(利害関係者)に説明するだけの材料がそろっているとも思いません」と主張した。

 新システム成立が見え、田中のメジャー挑戦の道が再び開かれようとしている。だが、ポスティング申請は球団の専決事項。同社長は「手を挙げた球団の最高額の方が(ステークホルダーは)納得しやすい。上限を決めることに納得してもらえるのか。(申請しないことが)絶対ないとは言い切れない」と言った。

 同社長は、3日の代表者会議にも出席。12球団で楽天だけ新システムに同意しなかった。会議後「田中の価値がフェアに判断されるものにしてほしい。額の多い、少ないではない。上限があってもいい。ただ、なぜ、その上限額になるのか、説明責任を果たせる制度でないと」と求めていた。

 もっとも、同社長も「海外に挑戦させたい気持ちはある」と、一方的に田中のメジャー挑戦を封印する気はない。この日も「(日米間で)最終的に合意したら、話し合います」と昨オフに結んだ3年契約に基づき、近く田中本人の意思を確認することを明言した。ウインターミーティングに出席するため、9日に渡米する。その前に、いったん話し合う可能性も示唆した。その場で、田中の熱意が球団を動かすことも考えられる。田中は今日6日、都内でバッテリー賞表彰式に出席。これまでは新システムの行方が不透明だったため、メジャー挑戦について発言を控えてきた。何を話すのか、注目される。

 ▼昨オフの田中の契約更改

 12月22日に、球団と3年12億円(金額は推定)プラス出来高払いの複数年契約を結んだ。ただし、1年ごとにシーズン終了後、複数年契約を途中で打ち切って、ポスティングシステム(入札制度)によるメジャー挑戦を行うか、球団と話し合うことで合意した。

 ◆田中への入札予想

 新ポスティングシステムで上限額が2000万ドル(約20億円)に設定されることで、新たに参戦を決定する球団は増える。これまでも資金力のあるヤンキース、ドジャースを筆頭に、カブス、レンジャーズ、エンゼルス、フィリーズなどが参加の意向を示唆。旧制度では最高入札額は1億ドル(約100億円)に到達するとも言われたが、新制度では資金力のない球団も参加が可能になり、10球団以上が入札するとみられる。複数球団が交渉権を得た場合、年俸は課徴金(ぜいたく税)の対象となるだけに、ヤ軍は厳しい状況とも伝えられる。だが、今オフの移籍市場では先発トップの評価をしており、ド軍とともに簡単には撤退しないだろう。田中が環境面など年俸以外を重要視すれば、他球団にも十分可能性が出てくる。