不惑の守護神が打者を惑わす。名付けて「ワクワク投法」だ。今年11月に40歳になる中日岩瀬仁紀投手(39)が3日、打者を幻惑する新フォームに取り組んでいることを明かした。球持ちを長くし、スライダーなどの変化球と直球の見極めを遅らせるもの。前人未到の400セーブまであと18セーブ。プロ16年目で初めてリリースポイントに手を加えた新フォームで、ワクワクの14年シーズンに臨む。

 世紀の大発見ならぬ、不惑の大発見だった。竜の守護神が昨年末、1つの答えに行き着いた。それはなんと、打者から見るとどんなボールも球種が分からなくなってしまうという前代未聞の投法だった。

 「リリースポイントをこれまでよりも少し前にした。たぶん打者から見れば球種が分かりづらくなる。全部真っすぐに見えるんだけど、変化球」

 簡単にいえば球持ちを長くする改造だ。なかなかボールを投げないことで、変化球を投げる際のひねる動作や抜く動作が見づらくなる。打者から見れば、直球と変化球の見極めがわずかに遅れる。「全部真っすぐに見える」腕の振りから描く変化球の軌道を、魔球と呼ぶのは大げさか。ともかく、プロ入りから15年連続50試合登板の鉄腕がリリースを見直すのは極めてまれ。「本当にかけだよ」と笑いながらも、期待で胸が膨らんでいるのは他でもない岩瀬自身だ。

 きっかけは昨年末の鳥取だった。スポーツジム「ワールドウィング」での練習中に先輩山本昌からアドバイスを受けた。ヒントを得て試行錯誤するうちに出来上がった新フォーム。素人からは分かりづらい変化でも、48歳左腕からは「全然違う投げ方で投げている」と驚かれたという。まさに大改造だった。

 「すごい自分が楽しみ。それがはまれば、昔みたいに怖いものなしで投げられるかもしれない。ここ数年楽しみというのはなかったから」

 昨年始めたノーワインドアップも封印し、本来のオールセットポジションで新フォームに集中する。すでにチャレンジしているカットボールやツーシームの新球も、新フォーム導入でより効果的になりそうだ。毎年のようにアイデアが浮かび、新たな挑戦を続ける。前人未到の400セーブまであと18セーブ。枯渇することのない探求心とチャレンジ精神が、鉄腕の強さの秘密だ。【桝井聡】<岩瀬のチャレンジ>

 ◆新球

 毎年のように取り組む。今オフはツーシームとカットボール、昨オフはナックル、一昨年オフはシンカーに挑戦。過去にはチェンジアップなどにも挑んだ。現時点ではスライダー、シュートがベース。

 ◆フォーム

 マイナーチェンジを重ねてきた。09年にはセットポジションでのグラブの位置を変更。10年は変化球のキレを出すため、肘を高くした。昨季は球威を取り戻すため、走者なしでもノーワインドアップを取り入れた。

 ◆配球

 昨オフは内角を突く投球を取り戻すと宣言。谷繁とも相談し、外角主体の攻めを内角主体に改めることにチャレンジした。

 ◆肉体

 年々、太りやすくなっていると実感。これまで体重90キロ台になるシーズンもあったが、このオフはトレーニングで「84、5キロをキープ」。キャンプではさらに絞り込む。