なぜ、あの体で力強い球が投げられるのか。楽天ドラフト1位松井裕樹投手(18=桐光学園)が19日、コボスタ宮城の室内練習場で2日連続となるブルペン入りし、立ち投げで25球を放った。身長174センチ、体重74キロと、プロでは決して大きくないが、指にかかった球には力強さがあった。視察した酒井勉2軍チーフ投手コーチ(50)は、マウンドに残るスパイク痕に注目。黄金ルーキーの足元に潜入した。

 松井裕が投げ終えたばかりのマウンドに、酒井コーチの姿があった。高村2軍投手コーチとともにプレート板のあたりを見詰め、熱心に話し込んでいた。すると、スマホを取り出しパシャリ。酒井コーチは「僕は足跡研究家です」と意味深に笑った。

 酒井コーチが注目したのは、スパイク痕だった。松井裕は、本塁に向かってプレート板の左端に軸足の左足を置く。投球動作で、その左足のスパイクを引きずった足跡が、まずは少し内側(三塁側)に入り、その後は本塁方向へと真っすぐ伸びていた。同コーチは「内に絞り込んでから前に出ている。だから、体は小さくてもパワーが出る」と解説した。

 同コーチによると、外側(左腕の場合は一塁側)にスパイク痕が残る投手の方が多い。だが、それは、軸足が外に流れていることを意味する。その分、打者方向への力が分散してしまう。さらに、体の開きが早くなり、打者から球が見えやすくなる恐れもある。同コーチは「田中でも、調子が悪いと(スパイク痕が)外に行く」と付け加えた。それほど、軸足の跡には意味がある。

 同コーチは、もう1つの点にも注目した。スパイク痕の長さだ。目測で約80センチと比較的、長かった。「長い方が球持ちがいいことが多い。松井は突っ張って投げているように見えて、意外と後ろ足(左足)が使えている」と話した。これまで見てきた中での最長は、近鉄在籍時の大塚の135センチ。ソフトバンク在籍時の和田も110センチと長かったという。

 同コーチのコレクションは、数百人に及ぶ。その中でも、松井裕のものは「なかなかない形をしている」と言うほど珍しかった。「今日の調子がどうだったかによるが、良い時のものを記録するんです。そうすれば、調子を崩した時の目安になる」と狙いを明かした。理論派コーチが着目した足元に、黄金ルーキーの秘密があった。【古川真弥】