<巨人5-1広島>◇9日◇東京ドーム

 巨人村田修一内野手(33)が、球史に残る大ホームランを放った。広島戦の8回、今村から放った打球は一直線で東京ドーム左翼最深部の天井に当たり、照明にはね返って左翼フェンス手前に落ちた。東京ドームの本塁打といえば、近鉄ブライアントが中堅スピーカーに直撃させた推定170メートル弾が有名だが、証言を総合すれば、飛距離は匹敵する。4番の一振りでダメを押し、チームは再び首位に並んだ。

 ありえない角度と速度で上がった。8回1死、村田の放った打球は東京ドームの左翼天井にぐんぐん進み、そのまま当たった。方向を変えて、約55メートルと、一番高い場所に架かっている照明にも当たった。左翼席の広島ファンは首を直角に折り曲げ、ダメ押しのボールを待った。

 スタンドではなく、グラウンドにぽとりと落ちた。何が起こったか分からず一瞬の静寂に包まれる中、4番は悠然とダイヤモンドを回った。バットの芯、ど真ん中を食った感触を「なかった。バットだけ抜けていく感じだった」と表現した。「一番飛んだ。ハマスタ(横浜)で打った場外ホームランより、はるかに飛んだ。日本人離れしてる。家系を調べないと」と豪快に笑った。

 試合後、グラウンドに出た球団関係者が、軌道を思い出して距離を測ろうとした。「150メートル以上ではないか」。球史に残る可能性があると踏み、球場に「測ってくれないか」と依頼したほどだった。正確に飛距離を測定した例がなく、東京ドームは推定で150メートルという結論を出した。しかし、実測すれば160メートル以上で歴代の大アーチを悠に超えていた…そう思わせる1発だった。

 俗に言う「看板弾」の推定飛距離が140メートル。ゴジラ松井が放った、天井のつなぎ目に入った1発は150メートルだった。ベンチでは「松井さんより(距離が)いっている」の声が出た。清水打撃コーチは「修一の方が、絶対に飛んでいる。松井のホームランより低い角度だった」と身ぶりを交えて説明。05年、西武カブレラが西武ドームで放った推定180メートル弾を目撃した片岡は「あの時に匹敵する飛距離だった」と証言した。

 原監督もスラッガーの本能を隠さなかった。「すごい当たり。目で追えなかった。ブライアントのホームランに匹敵する当たり」と、東京ドーム最長不倒記録の170メートル弾を引き合いに出した。照明が割れていないか確認作業が続く中、村田は「1本出たからどう、という時期じゃない」と決めた。豪傑にしか描けない孤には、万人を魅了するロマンがある。【宮下敬至】