<楽天6-1西武>◇24日◇東京ドーム

 念願の初勝利だ!

 楽天の2年目左腕、森雄大投手(19)が、西武6回戦でプロ初白星を挙げた。この春から習得したチェンジアップが要所でさえ、5回2/3を4安打1失点。12年ドラフト1位で入団し、新人の昨年は1軍登板なし。この日2軍落ちしたルーキー松井裕樹投手(18)とともに将来のエースとして期待される左腕が、新たな武器を手に、3度目のチャンスをモノにした。

 最後の打者の見逃し三振を見届けると、満面の笑みがこぼれた。森は大事そうにウイニングボールをパーカの右ポケットにしまうと、初めてのお立ち台へ。4万人を超える観衆の前での初勝利に、「うれしいです。声援が力になりました」と、喜びをかみしめた。

 新たな武器が力になった。初安打を許した4回無死一塁。1-2からの木村への勝負球は外角へのチェンジアップ。「その前の同じ球への反応で、嶋さんも、もう1球と思ったんだと思う。思い切ってミットに投げるだけでした」。狙い通りの併殺打に仕留め、初勝利への勢いは加速した。

 この決め球に取り組み始めたのは2月下旬。ドラ1の後輩、松井裕がチェンジアップで打者を抑える姿に、「右打者の外に逃げるボールがあれば、カウントも取れるし投球の幅も広がる」と習得を決意した。アドバイスは、同じ左腕で巨人のエース内海に求めた。2月23日の巨人とのオープン戦(沖縄セルラー)で、同チーム出身の金刃に紹介してもらった。「握り方と抜く感じを教えてもらいました。中指、薬指、小指と、しっかりと外に逃がす感じが分かってすごく参考になりました」。手先が器用なタイプだけに、ものにするまで時間はかからず、ここ一番で臆することなく、投げ込めるまでになっていた。

 きっかけになった松井裕は、この日2軍落ち。左腕同士、切磋琢磨(せっさたくま)してきたからこそ、「今日はあいつの分も絶対勝ってやろうと思った。絶対あいつも(1軍に)上がってくる。それまでローテを守りたい」と誓った。

 ウイニングボールは母親にプレゼントする。2軍降格を味わい、3度目の挑戦で手にした初勝利。「これからもチームが勝てるように精いっぱいやるだけです」。その表情は、強い決意に満ちていた。【佐竹実】

 ◆森雄大(もり・ゆうだい)1994年(平6)8月19日、福岡市生まれ。姪浜小-内浜中。東福岡1年からベンチ入りも甲子園出場なし。12年ドラフト1位で広島と競合の末、楽天入り。昨季は腰痛に悩むなど1軍登板なし。184センチ、75キロ。左投げ左打ち。

 ▼楽天森がプロ初勝利。2年目の森は19歳8カ月だが、楽天の10代投手が勝ったのは高卒1年目から勝った田中将大、釜田佳直に次いで3人目。左腕では森が初めて。