<ロッテ9-6ヤクルト>◇20日◇QVCマリン

 劇的1発男だ!

 ロッテ加藤翔平外野手(23)が交流戦初戦のヤクルトを相手に、延長10回2死一、二塁から左翼席へサヨナラ1号3ランを放った。これがプロ通算2本目。1本目は新人の昨年5月12日、楽天戦で史上2人目のプロ初打席初球アーチという離れ業を演じており、今度は人生初のサヨナラ弾。自身の1軍定着とともに、チームの目標である06年以来3度目の交流戦優勝へ向け、大きな弾みをつけた。

 加藤は二塁ベースを回って、やっとホームランに気付いた。「外野の頭は越えたかなとは思ったんですが…」。本塁付近に集まったナインの中に、歓喜のジャンプをしながら飛び込んで行った。「サヨナラは人生初です。何度もチャンスをもらいながら裏切ってきて…。いろんな人の思いに応えたかった」と感無量の面持ちで話した。

 9回の井口の同点弾で延長に入った10回2死一、二塁でチャンスが回ってきた。カウント3-2からの7球目。真ん中に入ってきた133キロ直球を強振すると、ライナーで左翼席に届いた。「久古さんはスライダーがいいので頭に入れながら、いい感じで真っすぐに反応できました」と快打を振り返った。

 スイッチヒッターだが、左右とも調子がいいことはあまりない。今は右打席が好調だ。6回に左腕岩橋の時に代打で初球を左翼線に二塁打し、そのまま中堅の守備に就いた。最後も左腕の久古だから、持っているのかもしれない。

 今季は2軍スタートだった。4月1日に昇格したが同13日に降格。5月13日に再び1軍に上がった。伊東監督からは「行ったり来たりするなよ」と言葉をかけられた。結果を求めるあまり、ボールを迎えに行く悪い癖がついていた。2軍では、すり足をやめて、足を上げてフルスイングするスタイルに戻した。「打率はもういいやと。当てに行くんじゃなく、しっかり振らないと1軍の投手は打てない。時間はかかってもそれを身に付けよう」と考えた。

 バットは890グラムから重くした。左は920グラムに。右は900グラム。「伊東監督から下に(振り)落とす感じにしたらいいとアドバイスを受けたんです」。6回の二塁打は初球を強振。サヨナラはフルカウントでフルスイング。自分のスタイルを身に付けた加藤が、進化の兆しを見せ始めた。【矢後洋一】<加藤翔平(かとう・しょうへい)アラカルト>

 ◆生まれ

 1991年(平3)3月28日、埼玉・加須市出身。

 ◆球歴

 小2から三俣タイガースで野球を始める。中学は陸上部で、野球は加須シニアに所属。春日部東では甲子園出場なし。上武大3年春から関甲信リーグで4季連続ベストナイン。4年春に盗塁王、同秋に打点王。プロ1年目の昨季はイースタンで最多安打と盗塁王の2冠を達成。

 ◆持ちすぎてる男

 ルーキー1年目の昨季は新人史上2人目の初打席初球本塁打の他に、フレッシュオールスターも初球先制2ランでMVP。さらにCSでも初打席本塁打を放った。

 ◆ドラ4伝説

 ロッテのドラフト4位は大成すると言われる“縁起物”。過去の4位は初芝、小林宏、渡辺俊、清田、益田ら。ちなみに高校のOBには公務員ランナー川内優輝がいる。

 ◆サイズ

 183センチ、84キロ。右投げ両打ち。

 ◆スイッチ

 高1の夏、俊足を生かすため左打ちに挑戦。

 ◆サラブレッド

 手動計測で50メートル走5秒68の俊足は陸上短距離で国体選手だった母清美さん譲り。強肩はやり投げ選手だった父正さんから受け継いだ。

 ◆趣味

 ディズニーランドが大好き。漫画は野球ものを中心に約1000冊を所持。お気に入りは「4P田中くん」。

 ◆赤

 新庄剛志氏に憧れて、リストバンドやグラブなど野球道具はほとんど赤色。

 ◆座右の銘

 「おかげさんで」。

 ▼加藤がプロ入り初のサヨナラ本塁打。加藤の本塁打は、プロ初打席の初球で記録した13年5月12日楽天戦に次いで2本目。初打席本塁打は今年5月15日メヒア(西武)まで56人いるが、プロ1号が初打席本塁打で2号がサヨナラ本塁打は99年ボーリック(ロッテ)以来2人目となり、日本人選手では初めて。ボーリックは4月14日オリックス戦で初打席本塁打、翌15日オリックス戦でサヨナラ本塁打を放った。