<阪神4-3日本ハム>◇17日◇甲子園

 よかった~。阪神藤浪晋太郎投手(20)の熱投が、マートンのサヨナラ打を呼び込んだ。8回まで毎回の自己最多13奪三振。自己最速タイ156キロの球威は最後まで衰えなかった。9回あと1人から呉昇桓(オ・スンファン)が逃げ切りに失敗するまさかの展開から盛り返し、延長12回、4時間46分のサヨナラ劇が完結。チームは1カ月ぶりの2連勝で2位に浮上した。

 打球音を聞くなり、藤浪は2リットルのペットボトルを両手に抱えて飛び出した。勢いのまま二塁付近に出来た歓喜の輪に飛び込む。延長12回、4時間46分の激闘の末の勝利。呼び込んだのは自己最多の13Kを奪い、自己最多の136球を投じた藤浪だった。祝いのシャワーをマートンに浴びせ、最高の笑顔でチームの1カ月ぶりの2連勝を喜んだ。

 8回を投げ4安打4四球で1失点。勝敗こそつかなかったが、己の直球を信じて仁王立ちした。真骨頂は134球目に表れた。自己最多の球数を更新した直後だった。ミランダの内角に投じた直球に、スピードガンはこの日3度目の156キロを掲示。終盤に記録した自己最速タイだった。

 藤浪

 このくらい投げる自信はあったので。しんどいところで真っすぐでカウントを稼ぐことが出来た。本来の投球が出来たと思います。8回も体重が乗って指にかかる感覚があった。勝ちにつながる投球ができてよかったです。

 1回は「リリースのタイミングが合わなかった」と2四球を与えた。それでも中田、ミランダを連続三振に仕留めピンチを脱出。その後は「修正できた」と尻上がりに調子を上げた。4打席中3打席で得点圏に背負って対戦した中田は完璧に遮断。クリーンアップには1本も安打を許さず、逆に7三振を奪った。

 熱投の原動力になったのが、藤浪の原点、自己最速タイを記録した直球とカットボールだった。だが藤浪は意外にも球速にはまったく興味を示さない。直球には藤浪流の流儀がある。「勝てる投手」を目指す藤浪にとって、野球は「球速選手権」ではない。

 藤浪

 球速には興味がないと言うか。出ればいいですけどね。自分の場合は球速より「球威」。打席の打者がどう感じるかなので。

 単なる数字には全く興味がない。打者の反応から見る「球威」が藤浪のバロメーターだ。13Kは、勢い、キレ、コンビネーションが抜群だった証拠。歓喜を呼び込んだ自己最多ずくめのマウンドには“藤浪晋太郎”が詰まっていた。【池本泰尚】

 ▼藤浪がプロ入り最多の13三振を奪い、阪神は14日能見10個、15日メッセンジャー13個に続いて先発投手が2ケタ奪三振を記録。3試合連続で2ケタ奪三振の投手が誕生したチームは、88年9月21~23日広島(白武14→川口10→大野10)以来、26年ぶり。阪神では67年5月25~28日(若生11→バッキー10→江夏11)以来、47年ぶり。

 ▼藤浪は8回でプロ最多136球を投げた。130球以上は3度目。昨年8月11日中日戦(ナゴヤドーム)で9回132球、今季初登板だった4月1日中日戦(7回2/3、6失点)の130球。