<DeNA8-7西武>◇21日◇横浜

 無我夢中だった。DeNAのルーキー嶺井博希捕手(23)は打球方向すら分かっていなかった。1点を勝ち越された直後の延長10回2死一、二塁。プロ初安打が右翼フェンス直撃の逆転サヨナラ三塁打。「何が起きたか分からなくて。レフト方向に飛んだと思ったんですけど…。三塁でアウトにならないように全力で走ってました」。ナインからもみくちゃにされながら、笑顔がはじけた。

 中畑監督も大絶賛の勝負強さだった。「いい心臓をしてる。アマチュアで日本一を経験しているのも生きてるね。でも口づけするのはやめといた。汗いっぱいだったから、熱い抱擁だけにしておきました!」。キヨシ節全開のお褒めの言葉。伝え聞いた嶺井は苦笑いを浮かべつつ、「(アマ時代の日本一の経験が)なくはないと思いますが、緊張しましたし、その実績があれば(試合は)打つ前に終わっていたと思う。捕手の立場ではまだまだ」と、浮かれることはなかった。

 反省したのはマスクをかぶった9回から、2イニング続けて失点したリード面だった。「打者の特徴と投手の特徴を比べる力がなくて安易にいってしまった」という顔には、殊勲打の喜びは消えていた。

 もともと両打ちも、プロ入り後は右打ち1本。それでも4月下旬から左打ちの練習も始めた。「少しでも成長出来ればと思って。左に挑戦したら右もよくなってきて。こういうこともあるんですね」。打撃もリードもまだまだ成長過程。ハスキーボイスの23歳は、一心不乱にアピールを続けていく。【佐竹実】

 ◆嶺井博希(みねい・ひろき)1991年(平3)6月4日、沖縄県生まれ。沖縄尚学時代はセンバツ優勝、亜大時代には明治神宮大会で優勝し、大学日本代表では正捕手。13年ドラフト3位でDeNA入団。入団会見では「ハマのシーサーと呼んで下さい」とアピール。175センチ、85キロ。右投げ両打ち。今季推定年俸は1000万円。

 ▼ルーキー嶺井がサヨナラ三塁打。これまで嶺井の打席は4月15日中日戦の1度(四球)だけで、これがプロ2打席目の初安打。プロ初安打がサヨナラは11年10月20日白浜(広島=8年目)以来で、新人では08年6月6日にプロ初打席でサヨナラ本塁打を放った加治前(巨人)以来。DeNAでプロ初安打がサヨナラは91年9月7日今久留主(2年目)以来になるが、新人で初安打がサヨナラは球団史上初めて。