<楽天1-8日本ハム>◇25日◇コボスタ宮城

 日本ハムのルーキー浦野博司投手(25)が、登板5試合ぶりの4勝目をマークした。緩急を使い楽天打線を7回6安打1失点に封じ、5月29日ヤクルト戦(神宮)以来の勝ち星。同い年の4番中田の満塁本塁打など打線の援護を受け、チームの後半戦初勝利に大きく貢献した。

 ポーカーフェースで帰路に就こうとすると、背中から最上級の賛辞が飛んできた。浦野が振り向くと、栗山監督が目を細めていた。「ナイスピッチング!

 ありがとう」。後半戦初白星をつかんだ。自身5戦ぶりに、会心の思いに酔いしれた。「粘り強くを意識して投げました」。被安打6、三振は1と派手さなくても96球とテンポ良く締めた。

 直近のほろ苦い経験が再び、奮い立つ力水になった。17日、長崎でのフレッシュ球宴に出場した。5月29日ヤクルト戦で3勝目を挙げて以来、登板4試合連続で白星から見放された。開幕からほぼ1軍に定着したが、2軍を中心に活躍する同期の新人らに交じっての舞台。本音をひた隠していた。「本当は1軍のオールスターに出たかった」。2番手で2回を4安打3失点と結果も、心も沈んだ。

 運命的な巡り合わせで、自分を見つめ直す機会になった。全パの先発は楽天松井裕。浦野は社会人セガサミー時代に、高校生の注目ルーキーと面識があり旧知の仲。自分を見失いかけていた同球宴で再会。年下左腕にお願いし、宝刀スライダーの操縦を伝授されたが一瞬で、習得を諦めた。「僕にはマネできない」。自分としっかり向き合うと覚悟を決め、開き直れた。

 快進撃を続けた今季序盤のようなスタイルが、よみがえった。キレある140キロ台の直球を軸に、高精度のスライダーなど変化球も丹念に操った。コンビネーションの妙で、楽天打線をひねった。「チームに貢献していなかったので、いい流れがくるように心がけました」。献身さを宿した執念で、ヒーローの座をまた射止めた。【高山通史】