<広島6-1阪神>◇27日◇マツダスタジアム

 父にささげる勝利だ。広島福井優也投手(26)が今季2度目の登板で阪神打線を9回1失点に抑え、12年8月4日阪神戦以来、2年ぶりとなる白星を手にした。完投に限ればルーキー時代の11年10月12日横浜戦以来だ。

 「こんなに簡単に点を取られるのかと思いました。終わったなと。でもあのゲッツーで助かった。菊池がよく捕ってくれた。本当に1人1人、打者だけと勝負するつもりで、テンポの良さを意識して投げた」

 1回、いきなり上本に二塁打されると鳥谷に適時三塁打を浴び、1失点。しかし1死一、三塁からマートンを二塁併殺に切ると乗った。2回からは安打を許しても要所を抑え、ゼロを並べた。終わってみれば9回完投勝利。今季広島にとっては87試合目で2度目だ。

 これまで明かしていないが無勝利に終わった昨秋、父・俊治さん(享年54)が急死した。「オヤジが死んでから勝っていなかったから。勝ちたかった…」。この日、つとめて軽く言ったが今季への思いは強かった。

 しかし今季初登板初先発した5月7日ヤクルト戦は5回6失点で初黒星を喫し、2軍降格。野村監督から「もうチャンスはない」と突き放されていた。

 「自分でもそう思いました。でもやることはやってきたので…。スタンドの福井コールを聞いて涙が出そうになりました」

 野村監督はこの日、言った。「待望の投手が出てきてくれた。鳥肌が立った」。指揮官がほめた福井の復活があれば、23年ぶりVの悲願に1歩、近づける。【高原寿夫】