<ソフトバンク2-1楽天>◇12日◇熊本

 ソフトバンクが3年ぶりの9連勝と止まらない。0-1の6回。金子圭輔内野手(29)が楽天辛島との11球勝負を制し、逆転の2点適時二塁打を放った。骨折した本多の代役二塁が主役の働きで、プロ11年目で初めてお立ち台に立った。他球団もうらやむ「人材の宝庫」から続々とヒーローが誕生。秋山幸二監督(52)の故郷熊本で、首位独走へ、またはずみをつけた。

 今の強みは伏兵がどんどん主役になること。プロ11年目で初のお立ち台だった金子は、その象徴だろう。「プロになったら1度は…と思っていた」。本拠地の“本物”よりは小さめの台だが、ファンの視線を初めて独占。「気持ちいい!」と大きく声を張った。

 0-1の6回2死一、三塁。辛島に追い込まれてからファウルで5度粘った。1球ごとにどよめく球場。辛島が4度首を振って選んだ11球目のチェンジアップは高く浮いた。「何とか粘って次につなげようと思った。いいところに落ちました」。バットに乗せた感覚は十分。根比べを制した一打が左中間に落ちた。逆転の2点適時二塁打となった。

 金子は俊足を生かすためプロで両打ちになった。もともと右打ちで、利き目も右だ。4回は同じチェンジアップで空振り三振に倒れたが、6回の11球勝負を「粘っている中で感じがつかめてきた」と振り返る。長く球を見られる右打席は得意とし、辛島から2安打。左投手は今季9打数5安打4打点と数字にも出ている。骨折離脱した本多に代わる二塁を任され、先発で3割8分5厘は代役以上の仕事ぶりだ。

 細身で気を抜くと体重は60キロ台へ落ちる。トレードで一時在籍したオリックスでは無謀な増量作戦にも挑戦。キャンプ地の高知で有名な屋台のギョーザを食べまくり、スタミナと体重アップを図ったが、痛風を起こして離脱。「強い打球を打ちたい」という純粋な思いが裏目に出た。今は2年前に結婚した麻由夫人特製のニンニク料理で体調はばっちり。この日で先発8試合目。「最初のうちはきつかったけど、慣れた」とベストの70~71キロを保っている。

 チームの窮状を埋める伏兵たちが次々と働いている。秋山監督は「今やんないでいつやるの」と当たり前と言わんばかりだが、金子のV打には「ワンチャンスでね」とホッとした。年に1度の地元熊本での開催。父辰芳さん(86)も駆けつけた「父親参観」で、2軍監督時代に指導した孝行息子が応えてくれた。前夜は名物の馬肉で首位独走へと験を担ぎ、試合前から「おれが走らないといけないな」と鼻息は荒かった。9連勝。首位をひた走る勢いはおさまりそうにない。【押谷謙爾】

 ▼ソフトバンクが11年9月30日西武戦から10月13日日本ハム戦以来、3年ぶりの9連勝。今日13日の楽天戦にも勝てば、11年の交流戦で1分けを挟んでマークして以来の10連勝となる。