<DeNA2-5阪神>◇17日◇横浜

 阪神のドラフト1位左腕岩貞祐太投手(22)がプロ2度目の先発で初勝利や!

 横浜商大時代に投げ慣れた横浜スタジアムで5回まで2安打無失点と快投だ。続投した6回に2死から連続アーチを浴びて降板したが、待望の先発ローテ救世主となった。なぬ、巨人は広島に逆転負け?

 1・5ゲーム差で虎が来る~。

 9回もベンチの岩貞の表情は険しかった。初勝利が確定し、ようやく笑顔になれた。鶴岡からウイニングボールを受け取り、大事にポケットへしまった。初めてのお立ち台。第一声で心から喜びを表現した。「ケガをして、思い通りにいかなかったけれど、ようやく1勝できてうれしいです」。

 プロ2戦目。緊張で体が思い通りに動かなかった前回とは違った。分岐点は3点リードの3回2死三塁。前夜本塁打を放っていた3番梶谷を打席に迎えた。初球から内角へ思い切り腕を振った。最後は外角低めへ勝負球のスライダー。空振り三振を奪い無失点で切り抜けると、ウキウキでベンチに走った。4、5回はそれぞれ2三振を奪った。前回は遠かった勝ち投手の権利をつかんだ。

 2月のキャンプ中の離脱からようやくここまで来た。ドラ1左腕の出遅れ。弱音や不安を、家族にも、恩師にも話すことはなかった。「周りが騒いでいるだけで全然大丈夫だよ」。横浜商大野球部の同期にさえ、そう伝えた。「投げなかったら疲れないんです。神経を使わないから。夜眠たくなくて、全然寝られなかった」と振り返った。

 ただ、体は素直だった。初めて味わう感覚だった。寮では故障中だった3年目松田の部屋にこもった。ゲームに明け暮れ、30巻を超える漫画を3日で読破した。その間1軍ではルーキーの梅野、岩崎が活躍していた。意外なところで投げられないつらさを知った。

 左肘の故障は前腕の肉離れ。「やってしまったことはしょうがない。これまでは手首で投げていたので前腕を酷使していた。もう同じケガはできない」。一日中シャドーピッチングを繰り返した。「ムチのようにしなる感覚」を覚えさせ、思いっきり振れる腕を作り直した。

 「やっぱり長かった。勝てたのはうれしいけれど、ケガをしていた時間を考えたら…。与えられた試合を全力でやりたい」と言い聞かせるように話した。次回は24日広島戦の予定。優勝争いの救世主となり、本当の復活を証明する。【松本航】

 ◆岩貞祐太(いわさだ・ゆうた)1991年(平3)9月5日生まれ。熊本県出身。必由館(熊本)では2年春からエースになり、3年夏は県4強。甲子園出場経験なし。横浜商大では2年時に大学日本代表入り。13年ドラフト1位で阪神入団。182センチ、78キロ。左投げ左打ち。今季推定年俸1500万円。