<阪神8-1中日>◇19日◇京セラドーム大阪

 先手必勝で、巨人に離れん-。2位阪神が中日に快勝し、首位巨人のゲーム差1・5をキープした。鳥谷敬内野手(33)がV打にダメ押し打と3安打3打点。1回は粘った末の9球目を一、二塁間を破るしぶとい先制打。4回は初球攻撃で左前に運び、相手の後逸を誘う2点打だ。先制した試合は40勝17敗と勝ちパターンを確立させ、巨人を追う速度を緩めない。

 目に見えない勝負の流れを引き寄せた。1429試合連続出場中の鳥谷は肌で感じ取っていた。1回、メッセンジャーが無死一、三塁のピンチをしのぐ。ここが勝負どころだ。「メッセが抑えたから点につながる…」と集中力を高めた。

 1回1死二塁。2球で追い込まれても動じない。3度ファウルで逃れ、フルカウントからフォークを捉えた。鈍いゴロは一、二塁間を渋く抜ける。9球目を打った粘りに「追い込まれていたし、四球でもいいから、とにかく後ろにつないでいく気持ちだった。いいところに飛ばせて良かったです」と振り返った。

 波状攻撃で2回までに5得点。中日を瞬く間にのみ込んだ。4回はライナーで逆方向へ。左翼藤井の後逸を誘い2者が生還。今度は初球を打ち、適時二塁打になった。臨機応変に相手投手を攻略した。

 快足も光った。2回2死から出塁。ゴメスの左翼線への当たりで、藤井がクッション処理にもたつくのを横目に本塁を駆け抜けた。「本塁にかえる気で一塁から走っている」と事もなげに言い、和田監督も「あそこまで全力で行かないと(走りの)勢いにつながらない」と評価する。ゴメスも「トリタニサンの素晴らしいベースランニングのおかげで打点がついた」と喜んだ。

 8月上旬。新人梅野が苦しみながら奮闘する姿を見て声を掛けた。「やれるときにトレーニングをやっておけよ」。同じ大卒でプロ入りし、1年目から1軍で戦う。かつての自身と同じ境遇だ。ルーキーの時から将来を見据えて取り組んだ鉄人ならではのメッセージだった。梅野も「鳥谷さんの姿勢を見ていて、そう思います。1年目から練習していたというのは周りにも聞いてます」と感謝。若手を感化させる背中なのだ。

 間もなく、1つの日本記録を打ち立てる。遊撃手のフルイニング出場記録だ。05年から3年間にわたって398試合出続けた自身の記録に迫る。この日で395試合。1度は途絶えた途方もない記録を塗り替える…。常識外れの歩みだろう。「巨人どうこうじゃない。目の前の試合を1つ1つ、やっていく」。首位巨人と1・5ゲーム差。1歩ずつ刻む男の言葉が逆転Vの道しるべだ。【酒井俊作】