<日本ハム9-5楽天>◇21日◇札幌ドーム

 控えめに、喜びをかみしめた。日本ハム市川友也捕手(29)に待望の瞬間がやってきた。4回1死。5球目。高め直球を振り抜いた。口を開けて見つめた打球は左翼席ギリギリに到達。プロ1号ソロ。本塁上で祈るようにして、静かに胸の前で両手を握った。「結構喜んでいたんですけどね」。苦節5年目。62試合、136打席目で、やっと生み出した。

 愛する家族に見守られ、節目を刻んだ。さやか夫人(28)と10カ月の長男千翔(ゆきと)くんが移籍後、初観戦。「打った瞬間(家族が)よぎりました」。球場の大歓声に驚いた千翔くんは大泣きしていた。昨オフに金銭トレードで巨人から移籍。東京の自宅を離れ単身赴任しながら新天地で奮闘している。自宅に帰ってくると「野球が楽しい」と生き生きする姿が家族にとって、大きな喜びになっていた。

 お立ち台では思いの丈を叫んだ。「サイコーでした!

 サカさん、ありがとうございます」と本塁打ボールを捕球したファンに感謝した。実は5年目29歳で新人王の資格を持つほどの苦労人。日本ハムでプロ初安打を放つなど躍進している。また新しい1歩を踏み出した。【田中彩友美】