<オリックス0-2楽天>◇23日◇京セラドーム大阪

 力でねじ伏せた。楽天則本昂大投手(23)がオリックス打線を8回3安打無失点。ハーラートップ12勝の西との投げ合いを制し、1勝差に追い上げる11勝目を挙げた。プロ入り後の自己最速を更新する154キロの直球が走った。チームの連敗は3でストップ。最下位に大きく沈む中、2年目右腕が一筋の光となる。

 自ら課した“縛り”が解け、9回の則本はリラックスしていた。ベンチで笑みもこぼし、ファルケンボーグがオリックスの攻撃を封じるのを見届けた。緊張を脱し「一生懸命に投げるのが、僕のできること。一喜一憂せず淡々と投げようと思っていた」と明かした。

 淡々と投げる。最大のピンチでもそうだった。2点をもらった直後の4回、2死一、二塁でT-岡田にぶつけた。肘当てに当たり、コンと高い音が響いた。帽子は取らなかった。佐藤投手コーチを中心にできた輪の中で「(次打者は)初球から振ってくる。勝負だ」と切り替えた。川端への初球148キロは、やや甘かったが押し込んで三ゴロ。「打ち損じてくれた。運があった」。ガッツポーズは見せずに引き揚げた。

 星野仙一監督(67)には「(4回の)フルベースが勝負だった。粘って投げた」と褒められた。剣が峰を越えれば独壇場。7回、再び迎えたT-岡田に最速更新の154キロを出した。「数字として出たことは良いことだけど、直球でファウル、空振りが取れた。球速以上に質が良かったのかな」と納得できた。追加の援護がなくても、8回まで投げきった。

 前回15日に勝つまで、1カ月半勝てなかった。2年目の壁を前に、練習しかなかった。その習慣は、三重中京大で身につけた。閉校が決まった母校で最後の学年。「後輩がいない。自分たちがやるしかなかった。えげつない練習のおかげでプロに行けた」。指導してくれた中村好治監督は今、夏の甲子園で三重を率い、ベスト4までコマを進めている。「我慢強く使ってくれた」と感謝する恩師へ、今日24日の準決勝を前に“勢い”を贈った。

 登板前日には塩見、辛島ら先発陣と「チームのためにと背負い込み過ぎるのはよくない」と話し合った。だが、ハーラートップに肉薄し言ったのは「僕たちは勝つしかない。チームが勝つことが一番」。借金が20を超えても、勝ちにいく。変わらない。【古川真弥】