<セCSファイナルステージ:巨人4-8阪神>◇第4戦◇18日◇東京ドーム
強すぎるで、ホンマに!
阪神が巨人に4連勝し、9年ぶりの日本シリーズ進出を決めた。歴史的G倒に導いた和田豊監督(52)は目を潤ませ、ナインと歓喜に浸った。リーグ優勝チームに1勝がつくアドバンテージ制が導入された08年以降、シーズン2位からのクライマックスシリーズ(CS)突破は初。パ・リーグCS覇者と戦う日本シリーズは25日、甲子園で開幕する。
虎将が泣いた。勝利の瞬間も顔色ひとつ変えなかった和田監督の涙腺がゆるんだ。スタンドのファンへ感謝の一礼。敵地東京ドームを声援が包んでいた。「和田~、ありがとう」。いつもは「涙」を否定する男が、もらい泣き。つらく歩んで来たセ代表への道のりが、頭をよぎった。
和田監督
う~ん…ここに来るまでいろいろあったしね。特にシーズン中、勝負どころで勝てなくてファンの皆様にも歯がゆい思いをさせてしまった。いろいろなものが詰まったクライマックスの優勝だから。
3年前、第32代阪神監督を引き受けた。1年目は借金20で5位にまで沈んだ。24時間、野球が離れられない宿命。趣味のゴルフもめっきりやらなくなった。男前に似合っていた髪も寂しくなった。
「勝っている時は寝なくてもいい。負けてる時は寝て忘れる。失敗したことは覚えているけどね。年がたつごとにノウハウ的なものはできてきたよ」
寝酒も喉を通らなかった。「勝負」と宣言した9月、初旬の6連敗で巨人の背中が遠のいた。ついには去就問題も湧いた。そんなとき、甲子園の監督室に掲げる額縁を見詰めた。「泰然自若」。知人の書家が書いた4文字とともに、揺れる心と戦った。
起用法に外野の声が飛んだ。前半戦、不調だった福留を「野球への姿勢を含めて絶対に必要」と使った。右肘痛の西岡はCS直前、先発三塁について直接話し合った。ゴメスは4番に固定、呉昇桓はギリギリまで1イニング限定にした。勝負どころへ向けた我慢と信念のタクト。ポストシーズンでは攻めの采配を崩さず、花を開かせた。宿敵に4連勝を飾ると、ナインは勢いよくグラウンドへ飛び出し、マウンド付近で指揮官を待っていた。だが和田監督はあえて近寄らず、いつものようにハイタッチで待った。胴上げはなかった。
和田監督
それは甲子園で。
85年以来の日本一へ、頂上決戦は誕生90周年の甲子園から始まる。「甲子園の胴上げ」は、早くても第6戦。そんな意地悪な声に「それは早ければ4戦目がいいし。敵地でも何でもいいから、1回は上げてもらおうかな」。感激と思いの詰まった涙をぬぐい、最後の勝負に挑む。【近間康隆】
▼公式戦の阪神は巨人から7ゲーム差をつけられ、勝率5割2分4厘4毛。日本シリーズ出場チームの勝率としては、75年阪急5割2分、73年巨人5割2分3厘8毛に次いで低い。プレーオフで優勝を決めた時代(04~06年パ)も含め、1位から5ゲーム差以上離されたチームのシリーズ出場は初。