「霧の悪夢」を晴らし、日本一への再挑戦や!!

 阪神鳥谷敬内野手(33)がこの舞台に立つのに、9年かかった。止まっていた時計が再び動きだす。24日の前日練習。秋晴れの甲子園で、視界にとらえるのは頂点だけだろう。プレーオフの死闘を勝ち上がってきたパ・リーグ王者のソフトバンクが相手だ。強敵に持てる力をすべてぶつける。

 「優勝して日本シリーズという感じじゃない。2位は2位。向こうは優勝して勝ち上がっている。胸を借りるつもりで、思い切ってやるだけ。初戦を、とにかく取れればいいですね」

 生え抜きキャプテンの口から出たのは「先手必勝」の思いだった。鳥谷には苦い教訓がある。日本シリーズに初出場した05年10月22日、ロッテとの第1戦。「2番遊撃」で先発した。1回、先頭赤星が出塁した直後に三振し、得点を奪えない。次第に千葉マリンは濃霧が立ちこめて、まさかのコールド負け。10失点した大敗以上に、ちぐはぐな流れを象徴する天候不良だった。第2、3戦も10失点で完敗。一気に4連敗で寄り切られた。

 初の日本シリーズは14打数4安打、打率2割8分6厘だったが、なすすべもなく敗れ去り、不完全燃焼の思いも強いだろう。「短期決戦だからじゃなく、塁に出ることとか普段からやることは変わらない。とにかく結果を出せればいい」。あのときの悔しさを晴らすときがやってきた。レギュラーで唯一の阪神V戦士は冷静に、そして熱く戦い、いまいましい夜霧に別れを告げる。【酒井俊作】