兄貴のように強くありたい…。阪神新井良太内野手(31)が11月30日、日刊スポーツの取材に応じ、今季限りで阪神を退団した兄貴浩のスタイルを継承することを誓った。虎移籍5年目となる来季はポジションを確約されない立場からのスタート。広島に移籍してゼロから再起を図る兄の姿勢を見習い、がむしゃらにレギュラー奪取を目指す。

 良太は言葉を選びながら、慎重に兄貴浩への偽らざる思いを語り始めた。11年シーズンから4年間、同じユニホームに袖を通した。「兄弟」という枠を超え、一野球人として25番の背中を追っていた。

 新井良

 何を言われても批判されても「痛い」「かゆい」を言わず、自分の野球に言い訳をしない。そういうところを尊敬している。そういう姿勢を学んできた。兄貴がチームからいなくなっても、自分はそういう姿勢を体現していかないといけない。

 数々の思い出の中、兄が12年に右肩痛と戦っていた記憶も鮮明に残っている。

 新井良

 一番の思い出は、自分がサードで兄貴がファーストで、両サイドを守れたことかな。アベックホームランを打てたのもいい思い出。あとは…。一昨年、車のハンドルを握るだけで右肩に激痛が走る中で、試合になれば何事もなかったかのようにバットを振っていたこととか…。ずっと間近で見てきたから。一緒にできなくなるのは寂しい。寂しいけど、自分は自分で兄貴の姿勢を体現していきたい。

 良太自身、14年は痛みと戦うシーズンを送った。8月28日、巨人戦を控えた東京ドーム。球場入り後のウオーミングアップ中、右足全体にしびれが出て、つま先まで感覚がなくなった。座薬、ブロック注射を打っても激痛が消えず、東京都内のホテルで2日間寝たきり状態となった。

 7月下旬ごろから異変には気付いていた。右の尻部分にしびれを感じながらも、トレーナーによる懸命な治療に支えられてプレーを続けた。だが、ついに限界が来た。「体がサボテンのように傾いたまま固まって、まっすぐ歩けないような状態になってしまった」。今でも記憶をよみがえらせると、表情が険しく曇る。

 新井良

 やってしまった時、これは本当にダメなヤツだと思ったよ。

 初めて経験した腰の激痛、下半身のしびれ。発症直後は野球人生の終わりすら脳裏をよぎったと言う。そんな経験を経た今だから、余計に分かる。腰の骨折、右肩痛…。陰では想像を絶する激痛に苦しみながら、何食わぬ顔でプレーし続けた兄の偉大さを。兄の姿勢を見習い、良太は今季も限界に達するまで、決して腰の痛みを悟られないように心がけた。来季はさらにたくましく戦う覚悟だ。

 新井良

 来年は32歳。とにかく試合に出ないといけない。それが外野であろうが、内野であろうが、こだわりはない。三塁にしても右翼にしても、試合に出る準備をしっかりする。まずは試合に出ることが最優先。その上で、自分は打って貢献しないといけない選手だと思っている。

 現状、来季のポジションは確約されていない。チーム事情により、今季と同じく内外野どちらの準備も必要となる可能性が高い。それでも目標はあくまでレギュラー奪取だ。腰痛のリハビリは進み、すでにティー打撃は再開。年内にはマシン打撃、ノックも解禁する。たとえチームが替わろうと、これからも兄貴浩の背中を追い、がむしゃらに自力で居場所をつかむ。【佐井陽介】