右肘手術からの完全復活を目指す中日吉見一起投手(30)が13日、沖縄・北谷キャンプで初の打撃投手を務めた。谷繁兼任監督らに62球を投げ、ブルペン投球を追加。1日のトータルはキャンプ最多の212球に達した。ともに開幕投手を狙う山井と大野も200球超え。大黒柱の参戦で激アツの争いは、3月27日開幕戦の相手阪神関係者を震えさせた。

 照りつける太陽のように吉見もブルペンでヒートアップした。キャンプ初の打撃投手を終えると、その足でブルペンに直行。汗を飛ばしながらちょうど100球を投げた。1日の球数では最多の212球。「たくさん投げ込みましたね。このクールは投げ込もうと思っていたので予定通りです。バランス良く狙ったところに投げることを意識した」。そう話す表情は充実感でいっぱいだ。

 通算71勝の大黒柱が漂わせた完全復活の予感は、味方を安心させ、虎をびびらせた。注目の打撃投手では谷繁兼任監督、和田の大ベテランを相手に計62球で、安打性の当たりは11本。「バランスを考えた」とコースを突く本来の姿に、打席で状態をチェックした指揮官も「投げられているというだけで十分」とニンマリ。右肘手術明けで2軍にいた1年前とはまるで違った。

 対照的に顔がこわばったのはネット裏のスコアラー陣だ。3月27日開幕戦(京セラドーム大阪)の相手、阪神飯田スコアラーは「十分でしょ」と苦笑い。「吉見、大野、山井。そのあたりが(開幕3連戦で)うちに来ると思っている」と吉見を加えた3本柱を挙げて、警戒を強めた。

 ライバルが震え上がるのも、無理はない。北谷球場では吉見の復活から、バチバチと火花が散っている。同じく開幕投手候補の山井と大野も初めて打撃投手を務め、追いかけるようにブルペンで投げ込み。212球を投げた吉見に対し、山井は272球、大野は234球といずれも200球オーバー。球数だけがすべてではないが、3投手のストレートな気持ちが球数に表れた。

 谷繁兼任監督は「そうやって競争というか、意識し合えばいいですね。開幕?

 そりゃまだこれからですよ」と何ともうれしそうだ。2年ぶりの開幕を狙うと公言する吉見は「今年は勝負の年。いつでも投げられて勝てるようにしたい」と意気込む。復活の予感を漂わせる背番号19が、投手王国再建の先頭に立つ。【桝井聡】