盛岡大付(岩手)の143キロ左腕・伊東昂大(3年)は、女手一つで4人兄妹を育ててくれた母君子さん(46)のためにも「絶対にプロに行く」と約束した。

 母と岩手のために―。毎日、現役時代と同じ練習量をこなしている伊東は、雨天のこの日も室内練習場で汗を流した。そこで切々とプロへの思いを語った。「高校入学の際に『卒業したらプロに入って楽にさせる』って約束しました」。兄2人、妹1人の4人兄妹を育ててくれた母君子さんに、恩返しするのが伊東の夢だ。

 もう1つは、高校3年間でお世話になった岩手の人々への感謝の思いだった。「中学までは人との付き合いも適当だった。岩手に来て人々が温かくて、人と話すことが楽しくなった」と伊東。関口清治監督(32)にも礼儀を教わり「岩手で学んだこともプロで生かしたい」と力強く語った。

 そんな謙虚な187センチの左腕は、6球団から注目されている。中でも「日本ハムさんが熱心に話を聞いてくれました」と関口監督。だが伊東は「僕は(菊池)雄星とは違う。どこの球団に指名されても、やるべき仕事をやるだけ」とキッパリ。「プロ1本」で運命の日を待っている。

 甲子園を沸かせた同世代の菊池、下沖とともに吉報を待つ。伊東は「彼らは上位指名ですよ。でも僕がもしプロに入れたら、もう1度、2人と対戦したいですね」と熱い思いを胸に、小学時代からの夢がかなう瞬間を、思い描いていた。【三須一紀】