雄星は取れなかったけど、将来有望な6人がそろった。29日、プロ野球新人選択会議(ドラフト会議)が都内のホテルで行われた。日本ハムは6球団が競合した花巻東・菊池雄星投手(3年)は引き当てられず、春日部共栄の中村勝投手(3年)を1位で指名した。しなやかなフォームと鋭い腕の振りが武器で「埼玉のダル」と呼ばれる右腕は、早くも入団への意思をみせた。中村を含め投手4人、捕手と内野手が各1人と計6選手の獲得交渉権を得た。

 日本ハムのドラフト1位指名を伝えるテレビ画面を見つめながら、中村は何度も小刻みにうなずいた。夢だったプロへの道が開いた。まさかの1位指名に驚きながらも、その現実をかみしめていた。「勝てる投手になりたい。投げる試合は全部勝ちたいと思う」。早くも入団を前提に力強く答えた。

 端正な顔だちから、高校入学してしばらくすると「ダルビッシュに似てる」と言われるようになった。9連続三振を奪うなどして注目を集めた今夏の埼玉予選では「埼玉のダル」とまで呼ばれるようになった。運命に引き寄せられるようにして、尊敬するダルビッシュのいるチームから指名を受けた。

 似てると言われはじめてから、意識するようになった。特に勉強したのが投球フォームだった。「ダルビッシュさんを見て、肩の開きを抑えるようにしました」。184センチの長身から投げ下ろすスタイルは、ダルビッシュをお手本にするのがちょうど良かった。「直球で勝負して、狙って三振の取れる投手になりたい。打者に向かっていく気持ちを大事にしたい」と抱負を口にした。

 ただ尊敬はしているが「埼玉のダル」のニックネームは歓迎していない。「あんまり好きじゃないんです。だれかの2世というより、自分自身を売っていきたい」と、負けん気をのぞかせる。自分の方がかっこいいと思うかという問いには、さすがに「いや、それはないです」と笑ってかぶりを振ったが、ダルビッシュの影武者で終わるつもりはない。中村は中村として、チームを支えられる投手を目指す。

 高校生に逸材がそろい注目を浴びたドラフトだったが、負けん気は同世代の選手たちにも向けられた。「自分は甲子園には行ってないけど、ケガをしない体をつくって、彼らを追い抜けるように頑張りたい。勝負はプロに入ってからだと思っている」。花巻東・菊池雄星投手の外れ1位だが、くじが外れて良かったと日本ハムに思わせることを心に誓った。【竹内智信】